[T5-P-3] Meso-scale faults in the Miocene Misaki Group, southwest Japan
Keywords:fault slip analysis, paleostress, forearc basin, Miocene, Philippine Sea Plate
西南日本の前弧海盆堆積物中の小断層から推定された応力史は,各堆積盆周辺の構造発達史やフィリピン海プレートの運動史の制約条件としてよく参照される(例えば,Yamaji, 2003, Yamaji et al., 2003).
四国南西部の土佐清水市には,中新世前半の前弧海盆堆積物とされる三崎層群が分布し,多数の小断層が認められる.しかしながら,これまでの三崎層群における研究は堆積学・古生物学的なものが主で,小断層を取り扱った研究はほとんどない.そこで,発表者らは三崎層群中に見られる小断層の実態の解明に向けて,それらの産状の調査と応力解析のための小断層データの取得を進めている.本発表では,これまでに観察した800条を越える小断層について,その産状と予察的な応力解析結果を報告する.
三崎層群は下位から順に養老層・浜益野層・竜串層の3つの地層からなる.堆積相や生痕化石の検討から,それらは外側陸棚から潮間帯までの上方浅海化を示す整合一連の地層であるとされる(奈良ほか,2017).
これまでに我々は三崎層群の分布する土佐清水市の海岸線沿いの8つの調査地域(養老層3地域・浜益野層3地域・竜串層2地域)において小断層データを取得した.いずれの地域でも地層面を基準面とした際のgap断層(基準面を引き離す運動センスの断層,Sato, 2006)が大きな割合を占めていたが,overlap断層(gap断層と逆センスの断層)や層面滑り断層も認められた.また少数ながら共役関係が認識できる断層群も存在した.
産状から,小断層には堆積後まもなく形成したものと,固結後に形成したものが混在していることが明らかになった.浅海性の砂岩層からなる竜串層では,傾斜方向の同じ微小な小断層群が特定の層準に発達していた.これは堆積時のノンテクトニック断層と推定される.一方で,竜串層には周辺の葉理の変形を伴わない点から圧密後に形成したと判断されるノジュールが見られ,それを切る小断層も認められた.また,鉱物脈および砕屑岩脈を切るもの,それらに切られるもののどちらも存在した.
小断層データを取得した地域ごとに分け,Hough変換法(Yamaji et al., 2006; Sato, 2006)で応力解析を行った.複数の応力クラスターが得られた地域もあり包括的な解釈は難しい.本発表では,いずれの地域でも得られた北東-南西方向に水平最小圧縮軸を持つ応力に着目する.
四国南西部の小構造を利用して古応力を検討したRaimbourg et al. (2017)は,三崎層群の分布域の数地点で今回我々が着目した応力に似る北西-南東方向に水平最大圧縮軸を持つ横ずれ断層型ないし逆断層型の応力を報告した.そして彼らはそれらの応力を三崎層群が大きく傾いている(木村,1985)ことを考慮せずに解釈した.しかし,本発表ではこれを支持しない.今回の解析で得た北東-南西方向に水平最小圧縮軸を持つ応力の主軸方向は,データセットごとに多少ばらついた.そして,それらの最大圧縮主応力軸の方向は,小断層データを採取した各地域の地層の法線方向の変化に対応するように見える.このことから,それらの応力はRaimbourgらのように現姿勢のまま解釈するのではなく,三崎層群傾動以前の正断層型応力とみなすのが妥当と考える.今後の検討課題は,この応力の成因の解釈・他の応力状態の決定・応力の時期の推定である.
<引用文献>
木村,1985,地質雑,91,815‒831./ 奈良ほか,2017,地質雑,123,471‒489./ Raimbourg et al., 2017, Tectonics, 36, 1317‒1337./ Sato, 2006, Tectonophys., 421, 319‒330./ Yamaji, 2003, Tectonophys., 364, 9‒24./ Yamaji et al., 2003, Tectonophys., 369, 103‒120./ Yamaji et al., 2006, J. Struct. Geol., 28, 980‒990.
四国南西部の土佐清水市には,中新世前半の前弧海盆堆積物とされる三崎層群が分布し,多数の小断層が認められる.しかしながら,これまでの三崎層群における研究は堆積学・古生物学的なものが主で,小断層を取り扱った研究はほとんどない.そこで,発表者らは三崎層群中に見られる小断層の実態の解明に向けて,それらの産状の調査と応力解析のための小断層データの取得を進めている.本発表では,これまでに観察した800条を越える小断層について,その産状と予察的な応力解析結果を報告する.
三崎層群は下位から順に養老層・浜益野層・竜串層の3つの地層からなる.堆積相や生痕化石の検討から,それらは外側陸棚から潮間帯までの上方浅海化を示す整合一連の地層であるとされる(奈良ほか,2017).
これまでに我々は三崎層群の分布する土佐清水市の海岸線沿いの8つの調査地域(養老層3地域・浜益野層3地域・竜串層2地域)において小断層データを取得した.いずれの地域でも地層面を基準面とした際のgap断層(基準面を引き離す運動センスの断層,Sato, 2006)が大きな割合を占めていたが,overlap断層(gap断層と逆センスの断層)や層面滑り断層も認められた.また少数ながら共役関係が認識できる断層群も存在した.
産状から,小断層には堆積後まもなく形成したものと,固結後に形成したものが混在していることが明らかになった.浅海性の砂岩層からなる竜串層では,傾斜方向の同じ微小な小断層群が特定の層準に発達していた.これは堆積時のノンテクトニック断層と推定される.一方で,竜串層には周辺の葉理の変形を伴わない点から圧密後に形成したと判断されるノジュールが見られ,それを切る小断層も認められた.また,鉱物脈および砕屑岩脈を切るもの,それらに切られるもののどちらも存在した.
小断層データを取得した地域ごとに分け,Hough変換法(Yamaji et al., 2006; Sato, 2006)で応力解析を行った.複数の応力クラスターが得られた地域もあり包括的な解釈は難しい.本発表では,いずれの地域でも得られた北東-南西方向に水平最小圧縮軸を持つ応力に着目する.
四国南西部の小構造を利用して古応力を検討したRaimbourg et al. (2017)は,三崎層群の分布域の数地点で今回我々が着目した応力に似る北西-南東方向に水平最大圧縮軸を持つ横ずれ断層型ないし逆断層型の応力を報告した.そして彼らはそれらの応力を三崎層群が大きく傾いている(木村,1985)ことを考慮せずに解釈した.しかし,本発表ではこれを支持しない.今回の解析で得た北東-南西方向に水平最小圧縮軸を持つ応力の主軸方向は,データセットごとに多少ばらついた.そして,それらの最大圧縮主応力軸の方向は,小断層データを採取した各地域の地層の法線方向の変化に対応するように見える.このことから,それらの応力はRaimbourgらのように現姿勢のまま解釈するのではなく,三崎層群傾動以前の正断層型応力とみなすのが妥当と考える.今後の検討課題は,この応力の成因の解釈・他の応力状態の決定・応力の時期の推定である.
<引用文献>
木村,1985,地質雑,91,815‒831./ 奈良ほか,2017,地質雑,123,471‒489./ Raimbourg et al., 2017, Tectonics, 36, 1317‒1337./ Sato, 2006, Tectonophys., 421, 319‒330./ Yamaji, 2003, Tectonophys., 364, 9‒24./ Yamaji et al., 2003, Tectonophys., 369, 103‒120./ Yamaji et al., 2006, J. Struct. Geol., 28, 980‒990.