[T11-P-3] High-temperature metamorphism and metamorphic age of the pelitic gneiss from Chijire Rocks in the eastern part of the Prince Olav Coast, East Antarctica
Keywords:Antarctica, Lützow-Holm Complex
東南極のドロンイングモードランド東部(35°E) からエンダビーランド西部(45°E)にかけての地域には,エディアカラ〜カンブリア紀の変動帯であるリュツォ・ホルム岩体が分布する(Hiroi et al., 1991; Shiraishi et al., 1994; 2003).近年,U-Pbジルコン年代,岩相に基づきいくつかのユニット区分(Takahashi et al., 2018; Takamura et al., 2018; Shiraishi et al., 2019; Dunkley et al., 2014; 2020)が提案されているが,これらはリュツォ・ホルム湾岸周辺の露岩を対象にしたものであり,東部地域については未踏査露岩,年代未測定露岩もあり,十分に理解されていない. Baba et al.(2022)は,プリンスオラフ海岸のあけぼの岩の角閃岩相片麻岩について二次イオン質量分析計を用いて変成年代の解析を行い,ジルコンのTi含有量とその年代値に基づき,角閃岩相の変成作用が937 ± 6 Maのトニアンに生じたことを明らかにした.これはリュツォ・ホルム岩体の変成度がカンブリア紀の広域変成作用で,累進的に上昇したという従来の考えを否定する結果である.最近,トニアンを示す変成作用は,日の出岩の西方に位置する二番岩からも,報告されており(Mori et al., 2023; Kitano et al., 2023), この岩体がまとまって分布することを暗示している.しかし,あけぼの岩の東方には未踏査露岩が多く,その変成作用,変成年代,原岩の情報はトニアンの年代を示す変成岩体の延長とその範囲を明らかにするうえで重要である.本報告では,63次南極地域観測隊で実施したちぢれ岩に分布する変成岩類を対象に変成作用の特徴と予察的な年代測定結果について報告する. ちぢれ岩は昭和基地に東方,約100マイルに位置する.2つの露岩から構成されるが,西に位置する露岩(1.4 × 0.6 km)について調査を実施した.片麻岩の片理面は,北西方向にトレンドを示し,南に70〜80°傾斜する.構造的下位から上位に向かって,黒雲母に富むザクロ石珪質片麻岩,角閃石に富むザクロ石珪質片麻岩,ザクロ石珪質片麻岩,層状片麻岩(巨晶ザクロ石角閃岩を含む),角閃石黒雲母片麻岩が分布する.これらに角閃岩,ペグマタイト,玄武岩などが貫入している.層状片麻岩は,ゼードル角閃石,ホルンブレンド,カミングトン閃石,ザクロ石,黒雲母などをさまざまな割合で含む酸性〜塩基性片麻岩の互層から構成される.層状片麻岩以外の岩相は塊状を呈するが,ところにより黒雲母の配列による片理が発達する.泥質片麻岩は稀で,層状片麻岩とザクロ石珪質片麻岩の境界付近の一箇所に確認された.泥質片麻岩は主に,石英,斜長石,黒雲母,アルカリ長石,ザクロ石,藍晶石,十字石から構成され,イルメナイト,ルチル,モナザイト,緑泥石を伴う.十字石は藍晶石の濃集部やマトリクス中に石英とともに産する.藍晶石の一部は黒雲母とともに,微細な結晶として片理を形成する.この泥質片麻岩を対象にシュードセクションモデルを作成したところ,約680-700 ℃,7.5 kbar以上の条件が見積もられた.また,薄片内に含まれるモナザイトを用いてEMP年代測定を実施したところ,1000 Ma前後の年代のみが得られた.この結果はプリンスオラフ海岸において,トニアンの年代を示す角閃岩相の変成岩体の東端は,少なくとも,ちぢれ岩に及ぶことを示している.
引用文献: Baba et al. (2022) Gondwana Res. 105, 243–261. Dunkley et al. (2014) 7th International SHRIMP Workshop, Abstract. Dunkley et al. (2020) Polar Sci., 26, 100606. Hiroi et al. (1991) Geological Evolution of Antarctica, 83-87. Kitano et al. (2023) J. Min. Petrol. Sci., in press. Mori et al. (2023) J. Min. Petrol. Sci., 118, 221124. Shiraishi et al. (1994) Journal of Geology, 102, 47–65. Shiraishi et al. (2003) Polar Geosci., 16, 76-99. Shiraishi et al. (2019) Int. Symp. Antarctica Earth Sci., Abstract. Takahashi et al. (2018) Journal of Asian Earth Sciences, 157, 245–265. Takamura et al. (2018) Geoscience Frontiers, 9, 355–375.
引用文献: Baba et al. (2022) Gondwana Res. 105, 243–261. Dunkley et al. (2014) 7th International SHRIMP Workshop, Abstract. Dunkley et al. (2020) Polar Sci., 26, 100606. Hiroi et al. (1991) Geological Evolution of Antarctica, 83-87. Kitano et al. (2023) J. Min. Petrol. Sci., in press. Mori et al. (2023) J. Min. Petrol. Sci., 118, 221124. Shiraishi et al. (1994) Journal of Geology, 102, 47–65. Shiraishi et al. (2003) Polar Geosci., 16, 76-99. Shiraishi et al. (2019) Int. Symp. Antarctica Earth Sci., Abstract. Takahashi et al. (2018) Journal of Asian Earth Sciences, 157, 245–265. Takamura et al. (2018) Geoscience Frontiers, 9, 355–375.