[T11-P-9] Overview of “Reconstruction of the East Antarctic Ice Sheet variability and understanding of the abrupt ice mass loss”
Keywords:Japanese Antarctic Research Expedition, Antarctica Ice Sheet and Southern Ocean
近年,南極氷床融解の加速が相次いで報告され,近い将来の急激な海水準上昇が社会的に強く懸念されている.一方,このような氷床の融解傾向は,過去数十年の観測から得られたもので,短周期の揺らぎである可能性もあり,長期的に継続し,やがて地球環境の激変に至るような現象であるかについては,まだ不明な点も残されている.また,南極氷床融解の予測には精密な大気-海洋および氷床モデルシミュレーションが不可欠であるが,現状の氷床融解メカニズムの理解は充分とはいえず,いまだ海水準上昇の将来予測には不確実性が大きい.この問題を解決する方法の一つとして,南極現地で直接得た地質データに基づく精度の高い過去の南極氷床融解の復元や,現在の観測のみでは見通せない大規模かつ急激な氷床融解のメカニズムの解明することが強く求められている.そこで,2022年度から開始した南極観測事業第Ⅹ期重点研究計画では,サブテーマ1-2「東南極氷床変動の復元と急激な氷床融解メカニズムの解明」として,砕氷船「しらせ」による本格的な海底堆積物掘削や,新開発の地層掘削システムを用いた凍結湖沼上からの湖底堆積物掘削,さらには露岩域での陸上ボーリングなどを実施することで,過去数十万年間における長期的な東南極氷床変動の復元と,さらには最後の氷期から現在の間氷期への移行期におきた急激かつ大規模な氷床融解の実態とそのメカニズム解明を目指している.さらに,本計画では東南極内陸部での永久結氷湖掘削や西南極ロス棚氷下掘削などの国際プロジェクトに参画し,国際的な連携の中で南極氷床変動メカニズムの総合的理解にも貢献する.これまでに第64次(2022-2023シーズン)の南極地域観測隊の活動では,DROMLAN(東南極ドロンイングモードランドでの国際共同運行航空網)を用いた早期の南極入りにより,通常より1ヶ月以上早い11月から南極での調査が可能となり,宗谷海岸北部において初の本格的な浅海-湖沼掘削を実施することができた.また,第65次では,リュツォ・ホルム湾とトッテン氷河沖において重点的な海底堆積物掘削調査を計画している.本発表では,これらの調査も含め,南極観測事業第Ⅹ期重点研究計画サブテーマ1-2の調査計画の概要について紹介する.