[G-P-33] Estimating the volume of the pyroclastic density current deposit generated by the April 2023 eruption of Shiveluch Volcano using satellite imagery and GIS
Keywords:Shiveluch Volcano, Pyroclastic density current, Bulk volume, Satellite imagery, GIS
2023年4月10日(JST)にシベルチ火山が比較的規模の大きな噴火を起こした.Global Volcanism Program(2023)によれば,噴煙は高度15,800 mに達し,噴出地点から南西600 km,東南東1,050 kmの山麓まで降灰をもたらした.山頂から南方約50 kmに位置するクルチ村では,層厚約8.5 cmの降灰を記録した.噴煙柱を伴う噴火の継続中に大規模な火砕物密度流(PDC)が生じ,その分布が,欧州宇宙機関が提供する光学衛星Sentinel-2( European Space Agency, Sinergise, 2023)によって捕らえられた.そこで本稿では,この衛星観測データから得られるPDCの分布範囲と衛星データにより作成された30mメッシュDEM(Copernicus GLO-30 DEM: European Space Agency, Sinergise, 2021)とこのDEMから生成したデジタル接峰面図を利用して,PDCの総体積計算を試みた.接峰面図を用いていることから,本手法はPDC総体積の最低見積もりである.体積演算の手法は次のとおりである.
1) Sentinel-2が2023年4月29日に取得した近赤外~中間赤外光( B12,B11,B04)の衛星データからRGB合成画像を生成しWebからダウンロードした.さらに,QGISを用いて分布範囲を抽出し,分布データをラスタからポリゴンに変換した.
2) GLO-30 DEMモデルに対してa.グリッド法(e.g., Motoki et al., 2015)とb.疑似埋谷法(㈱オープン GIS, 2003; 渡邊, 2022)を用いて接峰面図を作成した.なお,a,bともにR言語を用いた自作のプログラムでラスタデータを作成した.手法aについては,約1,000m,約500m,約250mメッシュの3ケースについてグリッド中の最高地点を抽出し,QGIS でTIN内挿した.手法bについては,埋谷の計算回数が5回,10回,20回のラスタデータを作成した.
3) 接峰面図ともとのGLO-30 DEMの差分をとり,1)で求めた分布範囲で差分のラスタデータを抽出した.
4) 抽出したデータのうち負の値は0に置き換え,セルごとに差分値と面積を乗じ,積分することで総体積とした.
以上の手法により,PDCの分布面積は約50 km2,火口からの流走距離は約21 km,総体積は手法aで0.23~0.94 km3,手法bで0.11~0.24 km3となった.本手法は手法やメッシュサイズの違いにより体積見積もりは異なった。手法aではグリッドのメッシュが粗いほど,体積見積もりが大きくなる.これは粗いメッシュの方が大きな谷を埋めるためである.手法bでは埋谷を繰り返すほど体積見積もりが大きくなるのは当然の結果である.一方で,どこまで谷を埋めるかを分布範囲と地形を見ながら慎重に検討する必要があるが,複数手法,複数ケースで概算しても体積は桁で変わらなかったとも言える.このことは,推定体積の最低見積もりを桁で議論する上では,接峰面図手法が有効であることを示唆している.また,今回のように衛星画像とデジタルデータの組み合わせによる体積演算手法を整備しておけば,迅速にPDC堆積物噴出量の概算を行うことができ,リアルタイムな火山活動推移予測に貢献できる可能性がある.
引用文献:
European Space Agency, Sinergise (2021) https://doi.org/10.5069/G9028PQB
European Space Agency, Sinergise (2023) https://sentinels.copernicus.eu/web/sentinel/missions/sentinel-2
Global Volcanism Program (2023) https://volcano.si.edu/showreport.cfm?wvar=GVP.WVAR20230412-300270
㈱オープン GIS (2003) https://www.opengis.co.jp/htm/basic/summit.htm
Motoki, A. et al. (2015) ACTA SCIENTIARUM: TECHNOLOGY, 37, 221-236.
渡邊 康志 (2022) 沖縄地理, 22, 1-16.
1) Sentinel-2が2023年4月29日に取得した近赤外~中間赤外光( B12,B11,B04)の衛星データからRGB合成画像を生成しWebからダウンロードした.さらに,QGISを用いて分布範囲を抽出し,分布データをラスタからポリゴンに変換した.
2) GLO-30 DEMモデルに対してa.グリッド法(e.g., Motoki et al., 2015)とb.疑似埋谷法(㈱オープン GIS, 2003; 渡邊, 2022)を用いて接峰面図を作成した.なお,a,bともにR言語を用いた自作のプログラムでラスタデータを作成した.手法aについては,約1,000m,約500m,約250mメッシュの3ケースについてグリッド中の最高地点を抽出し,QGIS でTIN内挿した.手法bについては,埋谷の計算回数が5回,10回,20回のラスタデータを作成した.
3) 接峰面図ともとのGLO-30 DEMの差分をとり,1)で求めた分布範囲で差分のラスタデータを抽出した.
4) 抽出したデータのうち負の値は0に置き換え,セルごとに差分値と面積を乗じ,積分することで総体積とした.
以上の手法により,PDCの分布面積は約50 km2,火口からの流走距離は約21 km,総体積は手法aで0.23~0.94 km3,手法bで0.11~0.24 km3となった.本手法は手法やメッシュサイズの違いにより体積見積もりは異なった。手法aではグリッドのメッシュが粗いほど,体積見積もりが大きくなる.これは粗いメッシュの方が大きな谷を埋めるためである.手法bでは埋谷を繰り返すほど体積見積もりが大きくなるのは当然の結果である.一方で,どこまで谷を埋めるかを分布範囲と地形を見ながら慎重に検討する必要があるが,複数手法,複数ケースで概算しても体積は桁で変わらなかったとも言える.このことは,推定体積の最低見積もりを桁で議論する上では,接峰面図手法が有効であることを示唆している.また,今回のように衛星画像とデジタルデータの組み合わせによる体積演算手法を整備しておけば,迅速にPDC堆積物噴出量の概算を行うことができ,リアルタイムな火山活動推移予測に貢献できる可能性がある.
引用文献:
European Space Agency, Sinergise (2021) https://doi.org/10.5069/G9028PQB
European Space Agency, Sinergise (2023) https://sentinels.copernicus.eu/web/sentinel/missions/sentinel-2
Global Volcanism Program (2023) https://volcano.si.edu/showreport.cfm?wvar=GVP.WVAR20230412-300270
㈱オープン GIS (2003) https://www.opengis.co.jp/htm/basic/summit.htm
Motoki, A. et al. (2015) ACTA SCIENTIARUM: TECHNOLOGY, 37, 221-236.
渡邊 康志 (2022) 沖縄地理, 22, 1-16.