[G-P-35] Investigation of the preservation of the ash-fall deposit of the 2011 eruptions of Shinmoe-dake volcano, Japan
Keywords:Eruption record, Pyroclastic deposits, Erosion, The Shinmoe-dake 2011 eruption
火砕堆積物の地質調査は過去の噴火を解明し,将来の噴火推移予測や火山噴火リスク評価を可能とする.一方で地質学的に明らかにされた噴火記録の数は過去に遡るほど急激に減少している(Kiyosugi et al., 2015).例えば地球全体の噴火記録の約40%を占める日本の噴火の内,最近10万年間の中規模(火山爆発指数4)の噴火について見ると,約90%の噴火記録が失われている.また,世界の噴気記録の消失は日本噴気記録の消失の約8倍であると推定される(Kiyosugi et al., 2015).噴火記録の消失の主要な地質学的要因(浸食や埋没など)の進行のプロセスと時間スケールを明らかにするため,噴火直後に火砕物分布が詳細に調査された霧島火山新燃岳2011年噴火(VEI3)の降下火砕堆積物を対象に火砕堆積物の浸食の程度を調査した.
新燃岳2011年噴火によって噴出した降下火砕堆積物の噴火直後の産状や粒径はMiyabuchi et al (2013)やWhite et al(2017)に報告されている.噴火直後に堆積物の層厚が測定されている地点を中心に野外調査を行い,現在も確認できる堆積物の産状や層厚の記載を行った.市街地などでは噴火後に降下火砕物の除去作業などが行われている場合があるため,できるだけ人手の入らない草地などを中心に調査を行った.
調査の結果,以下の3つの領域と,その領域に2011年時点で堆積していた堆積物の特徴が明らかになった.
・初生堆積物の分布する領域:産状がMiyabuchi et al (2013)の記載と整合的であったり(特に火口から約3.5kmの範囲で顕著),層厚が厚く連続的で明瞭であったり,堆積環境から考えて堆積物の二次的な流出や流入が考えにくいといった特徴が見られる堆積物を初生堆積物とした.こうした堆積物は比較的火口に近い山地・山林に分布し,落ち葉などに覆われていることが多い.降下火砕堆積物全体の分布の主軸方向に見た時,初生堆積物は約18km以内の範囲に分布している.初生堆積物が残っている地点は,もともとの層厚が約2㎝以上で中央粒径が約1㎜以上の堆積物であった地点である(図1).
・二次堆積物の分布する領域:構成粒子の種類が様々であったり,土壌が混じっていたり,土壌中に不連続に分布したりする等の特徴がある堆積物,および2011年時点の層厚よりも現時点での層厚が厚くなっている堆積物を二次堆積物とした.これらは山地や平野に分布しており,堆積物分布全体の主軸方向に見た時,約22km以内の範囲に分布している.
・堆積物の見られない領域:火口から約22km以遠では二次堆積物などの噴火の痕跡も見られなくなる.これらの地点は平野に分布しており,農地や市街地となっている地域が多い.また,これらの地点は2011年時点で堆積物の層厚約1㎝以下,中央粒径約1㎜以下であった地点がほとんどであるが,当時1.8㎝の堆積物(中央粒径約0.7㎜)が見られた地点でも堆積物の痕跡が無い場合が見られた(図1).
以上の結果は, 降下火砕物が地質記録として地層中に保存されるための条件(層厚と粒径分布)を知る上で重要な一事例と言える.
引用文献
Kiyosugi, K. et al. (2015) How Many Explosive Eruptions are Missing from the Geologic Record? Analysis of the Quaternary Record of Large Magnitude Explosive Eruptions in Japan: recurrence rates, missing data and preservation of geological record of volcanism. Journal of Applied Volcanology, 4, 17.
Miyabuchi, Y., Hanada, D., Niimi, H., & Kobayashi, T. (2013) Stratigraphy, grain‐size and component characteristics of the 2011 Shinmoedake eruption deposits, Kirishima Volcano, Japan. Journal of Volcanology and Geothermal Research, 258, 31–46.
White, J. T., Connor, C. B., Connor, L., & Hasenaka, T. (2017) Efficient inversion and uncertainty quantification of a tephra fallout model. J. Geophys. Res. Solid Earth, 122, 281–294, doi:10.1002/2016JB013682.
新燃岳2011年噴火によって噴出した降下火砕堆積物の噴火直後の産状や粒径はMiyabuchi et al (2013)やWhite et al(2017)に報告されている.噴火直後に堆積物の層厚が測定されている地点を中心に野外調査を行い,現在も確認できる堆積物の産状や層厚の記載を行った.市街地などでは噴火後に降下火砕物の除去作業などが行われている場合があるため,できるだけ人手の入らない草地などを中心に調査を行った.
調査の結果,以下の3つの領域と,その領域に2011年時点で堆積していた堆積物の特徴が明らかになった.
・初生堆積物の分布する領域:産状がMiyabuchi et al (2013)の記載と整合的であったり(特に火口から約3.5kmの範囲で顕著),層厚が厚く連続的で明瞭であったり,堆積環境から考えて堆積物の二次的な流出や流入が考えにくいといった特徴が見られる堆積物を初生堆積物とした.こうした堆積物は比較的火口に近い山地・山林に分布し,落ち葉などに覆われていることが多い.降下火砕堆積物全体の分布の主軸方向に見た時,初生堆積物は約18km以内の範囲に分布している.初生堆積物が残っている地点は,もともとの層厚が約2㎝以上で中央粒径が約1㎜以上の堆積物であった地点である(図1).
・二次堆積物の分布する領域:構成粒子の種類が様々であったり,土壌が混じっていたり,土壌中に不連続に分布したりする等の特徴がある堆積物,および2011年時点の層厚よりも現時点での層厚が厚くなっている堆積物を二次堆積物とした.これらは山地や平野に分布しており,堆積物分布全体の主軸方向に見た時,約22km以内の範囲に分布している.
・堆積物の見られない領域:火口から約22km以遠では二次堆積物などの噴火の痕跡も見られなくなる.これらの地点は平野に分布しており,農地や市街地となっている地域が多い.また,これらの地点は2011年時点で堆積物の層厚約1㎝以下,中央粒径約1㎜以下であった地点がほとんどであるが,当時1.8㎝の堆積物(中央粒径約0.7㎜)が見られた地点でも堆積物の痕跡が無い場合が見られた(図1).
以上の結果は, 降下火砕物が地質記録として地層中に保存されるための条件(層厚と粒径分布)を知る上で重要な一事例と言える.
引用文献
Kiyosugi, K. et al. (2015) How Many Explosive Eruptions are Missing from the Geologic Record? Analysis of the Quaternary Record of Large Magnitude Explosive Eruptions in Japan: recurrence rates, missing data and preservation of geological record of volcanism. Journal of Applied Volcanology, 4, 17.
Miyabuchi, Y., Hanada, D., Niimi, H., & Kobayashi, T. (2013) Stratigraphy, grain‐size and component characteristics of the 2011 Shinmoedake eruption deposits, Kirishima Volcano, Japan. Journal of Volcanology and Geothermal Research, 258, 31–46.
White, J. T., Connor, C. B., Connor, L., & Hasenaka, T. (2017) Efficient inversion and uncertainty quantification of a tephra fallout model. J. Geophys. Res. Solid Earth, 122, 281–294, doi:10.1002/2016JB013682.