130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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G. General Session

[3poster38-47] G. General Session

Tue. Sep 19, 2023 1:30 PM - 3:00 PM G1-1_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[G-P-36] (entry) Spatiotemporal changes of recent ostracod assemblages in Lake Nakaumi over the past c.a. 60 years

*【ECS】Aki ISHIGAKI1, Toshiaki IRIZUKI1, Koji SETO1, Mika SHIMAIKE1, Akira TSUJIMOTO1 (1. Shimane Univ.)

Keywords:Ostracoda, Lake Nakaumi, Reclamation and Freshening Project, Honjo area

島根・鳥取両県にまたがる中海は,中国山地を水源とする斐伊川の河口に位置し,閉鎖的な多塩性汽水湖である.主に西側の宍道湖と中海を結ぶ大橋川の河口から低~中塩分汽水が供給され,東側の境水道から海水が流入している.中海では,戦後に食糧を増産させるため,1963年に国による干拓・淡水化事業が始まった.事業に関する本格的な工事は1968年より開始され,湖口部の中浦水門の設置,中海北西部の本庄水域を囲む堤防工事,及び沿岸の干拓工事などが行われた.工事以前では境水道から流入していた海水は中央にある大根島の周りを反時計回りに流れていたが,工事以後では大根島の東側で南下し,時計回りに流れるようになり,本庄水域には海水がほとんど流入しなくなった.その後,2002年12月に干拓・淡水化事業は中止され,2005年から2009年にかけて大根島の東に位置する中浦水門と本庄水域沿いの西部承水路堤防の撤去や森山堤防の一部開削の工事が行われた.
 本研究で対象とした貝形虫とは,体長1 mm前後の微小甲殻類で世界のあらゆる水域に繁栄している.中海にも多く生息しており,干拓・淡水化事業が始まる前の1963/1967年にIshizaki(1969),工事の完了直後の1986年に高安ほか(1990),その約15年後の2002年に入月ほか(2003)により貝形虫群集の研究が行われた.本研究では,上記の既存研究結果と2021年に行われた調査結果とを比較し,過去約60年間に行われた環境改変により中海の貝形虫群集がどのように変化してきたのかを検討する.
 本研究の貝形虫分析には,島根大学エスチュアリー研究センター所有の小型船舶上から2021年8月にエクマンバージ式グラブ採泥器により採取された湖底表層堆積物の表層1 cmを使用した.堆積物を250メッシュ(開口径:63μm)の篩上で水洗し,生体と遺骸の区別を容易にするため,ローズベンガルで染色し,水洗・乾燥させた.その後,乾燥試料を200メッシュ(開口径:75μm)の篩で分別し,粗粒な堆積物を適宜分割して全ての貝形虫を双眼実体顕微鏡下で抽出した.
 採取された試料から76種の貝形虫が産出した.最優占種は日本全国の閉鎖的内湾中央部泥底で優占し(池谷・塩崎,1993),有機汚濁に耐性がある(入月ほか,2003)Bicornucythere bisanensisであった.この種は大根島南東側の沿岸,旧中浦水門の南部,および湖心から多産し,独占する地点もあった.大根島南西側の沿岸ではXestoleberis hanaiiHemicythere miiiなどの沿岸の葉上・砂底種が多産した.低塩分あるいは塩分変動の激しい場所に生息するSpinileberis furuyaensisCytherura miiiDolerocypria mukaishimensisは大橋川河口周辺で散点的に産出した.また,貝形虫は本庄水域の中央部では少なく,無産出の地点も多くみられた.その他の種に関しては,旧中浦水門の南側で沿岸浅海性種が多産した.種多様度は旧中浦水門南側の沿岸で最も高く,大根島周辺でも高かったが,湖心へ向け減少し,1種しか産出しない場所も多かった.中海の最も奥にあたる米子湾周辺では貝形虫がほとんど産出しなかった.B. bisanensisは約60年間を通して中海で最も優占する種でありつづけたことに変わりなかったが,分布の中心は,1963/1967年と1986年,2002年,2021年とでは大きく変化し,1963/1967年では大根島北西部より反時計回りに南西部まで,1986年以降では大根島南東部から湖心であった.また,B. bisanensisの個体数は2021年で最も多かった.本庄水域に関して,2002年では大根島北西側の沿岸のみで産出していたが,2021年では森山堤防付近と大海崎堤防の北西側にも産出した.また,北西側の沿岸は,堤防が開削された後に覆砂され,異地性の貝形虫が化石となって産出した.大橋川河口周辺で産出したC. miiiD. mukaishimensisは,2002年と比較すると激減していることが認められた.
引用文献 池谷・塩崎(1993)地質論,no. 39,15–32.入月ほか(2003)島根大地球資源環境学研報,no. 22,149–160.Ishizaki(1969)Sci. Rep. Tohoku Univ., 2nd Ser. (Geol.), 41, 197–224.高安ほか(1990)島根大地質研報,no. 9,129–144.