130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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G. General Session

[3poster38-47] G. General Session

Tue. Sep 19, 2023 1:30 PM - 3:00 PM G1-1_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[G-P-40] Studying field geology inn the Himalaya-Report of the 11th Student Himalayan Field Exercise Tour in March 2023.

*Masaru Yoshida1,2, Mukunda Raj Paudel3, Kazunori Arita4, Tetsuya Sakai5, Bishal Nath Upreti6 (1. Gondwana Institute for Geology and Environment, 2. Tribhuvan University (Emeritus Professsor), 3. Tribhuvan University, Department of Geology, Tri-Chandra Campus, 4. Hokkaido University Museum, 5. Shimane University, Faculty of Science and Technology, 6. Nepal Academy of Science and Technology)

Keywords:Himalaya, Student field exercise, Field exercise tour

ヒマラヤで野外地学を学ぶ―第11回学生のヒマラヤ野外実習ツアー 20233月)報告 吉田勝1,2・M.R.パウデル2・在田一則3・酒井哲弥4・B.N.ウプレティ5 1 ゴンドワナ地質環境研究所,トリブバン大学トリチャンドラキャンパス地質学教室, 北大総合博物館,島根大学総合理工学部,ネパール科学技術アカデミー ヒマラヤは地球で最も高く,今なお上昇しつつある最も新しい山脈である.ここでは 造山運動の形跡をまざまざと見ることができる.学生のヒマラヤ野外実習ツアー(SHET)は2012年より毎年実施されてきた.今年3月には第11回の実習ツアーが3月3日から18日の16日間で実施された.参加者は各地5大学の学生11人,トリブバン大学生2人,中国の成都技術大学院生1人と日本の山岳写真家1人で,合計15人,指導教員は筆者とトリブバン大学のM.パウデルでチームの総勢は17人であった. 野外実習コースは例年と同じで,カトマンズ~ポカラ(泊)~カロパニ(泊)~ムクチナート~カグベニ(泊)~カロパニ(泊)~タトパニ(泊)~ポカラ(2泊)~タンセン(泊)~ルンビニ(泊)~カトマンズを貸切バスで10日間のツアー,その内ムクチナート~タトパニ区間は主に徒歩であった(図1). 野外ツアー期間中,天候はおおむね良好で,徒歩区間で1日降雪のため難渋したが全体として大きな問題はなく,予定通りの見学・調査を行なうことができた.本実習ツアーの毎日の行動詳細は吉田(2023)*で報告した. なお,ネパール地質鉱産局(DMG)では昨年5月から外国チームによる国内の野外調査活動と標本の持ち出しに対して厳格な規則を定めたので,SHET-11はそれに従った.そのために日本出発前から実習ツアー最終日まで,TU側といろいろな打合せや書類作りなどかなりの苦労があった. 今回,日ネ両国の入国規制は昨年よりかなり緩められており,ネパールの新期感染者数は日本の1万分の1以下であったが,それでも日本入国時にはワクチン3回以上の接種あるいはネパール出国72時間以内のPCR検査陰性証明が必要とされた.後者に該当したのは4人だったが,幸い全員陰性であった. 野外調査期間の前半は高所障害を呈した1人以外は全員元気であった.しかし,後半から帰国後にかけて6人前後に喉の痛み,咳,下痢や発熱があった.これらは,とくに寒かった降雪日の野外活動直後から風邪症状を示した参加者らと,発熱と下痢で細菌性の胃腸障害に罹患したと思われた学生らがほぼ半々であった.後者の学生らは帰国後病院で治療を受けたが,回復に1数館前後を要した. 帰国の日,空港では岩石サンプル持出しを心配していたが,セキュリティ検査官はDMGの許可証を一瞥しただけで全く問題なく通過できた.検査の厳密度は検査官の個性によると思われ,毎回許可証が必要なのは確かである. SHET-11では暫定参加費を20万円としていた.ネパール国内の諸経費は数年前から漸増して来ているが,今年はとりわけ山岳地域での食事料金が高騰していた.これらのためにチームとして経費節約に大きな努力を払い,ネパール国内経費を従来と同程度に抑えることができた.しかしフライト料金+VISA料金は平均124,001円と過去10回の平均78,445円の1.58倍となり,学生1人当たりのツアー経費は238,331円と過去2番目の高額となった.これに対して一般対象のクラウドファンディングや1組織からの寄付金などよって一人当たり22,730 円の参加費補助を行なった.しかし結局,学生1人当たりの参加費は平均215,601円と過去10回の実習ツアーの中で最高額となった(表3). 学生のヒマラヤ野外実習プロジェクトでは第12回の実習ツアーを来年3月に実施する予定である.しかし上記のように,航空運賃やネパール国内の諸経費が高騰しているために,学生参加費が20万円を越えてしまうことは避けられない状況になりつつある.これを避けるためには昨年から開始したSHET対象のクラウドファンディング**を毎回充実させていかねばならないし,また文科省や民間諸組織の補助, 金獲得の努力も再開せねばならないであろう.関係各位のご理解・ご協力を期待したい. 引用文献 吉田勝,2023,第11回学生のヒマラヤ野外実習ツアー引率日誌.(吉田勝編,2023)ヒマラヤ造山帯大横断2023―第11回学生のヒマラヤ野外実習ツアー2023年3月の記録(本書),フィールドサイエンス出版,印刷中.
* ヒマラヤ造山帯大横断2023,吉田勝(編)フィールドサイエンス出版,橋本,231頁. ** 「学生にヒマラヤで学ぶ機会を!プロジェクト」http://www.gondwanainst.org/cf