[T15-P-11] Re-examination of stratigraphic division and depositional age of the accretionary complex in the Ultra-Tamba Belt, northern Kinki district, Southwest Japan
Keywords:stratigraphic division, depositional age, accretionary complex, Ultra-Tamba Belt
はじめに
超丹波帯付加複合体は氷上C(C=コンプレックス),大飯C,上月Cに区分され,それらの最終堆積時期(≒付加時期)は前二者がローピンジアン世,後者がグアダルピアン世とされている(Ishiga, 1986;Caridroit et al., 1985;竹村ほか, 1993).
問題点と目的
大飯Cの付加時期はF. bipartitus–F. charveti群集でのF. scholasticus, F. charveti, F. bipartitus, A. triangularisの共産に基づいて決定され,ローピンジアン世前半(Wuchiapingian期)とされてきた(Ishiga, 1986).しかしA. triangularisは他の種と共存せず,その産出はN. optima帯に限られ,時代はローピンジアン世末(Changhsingian期後半)である(Kuwahara et al., 1998).また綾部地域では,十倉層(大飯C下部に相当)から砕屑性ジルコンの最若U–Pb年代として260〜230 Maが報告された(坂田ほか, 2017).つまり大飯Cの付加時期に関する年代論には,更なる検討を要する.本論では,近畿地方北部における従来の層序区分や放散虫化石に基づく付加時期を再検討し,大飯Cで新たに測定した砕屑性ジルコンU–Pb年代と合わせて,超丹波帯の標準層序単元の定義と堆積時期を見直す.
層序区分の修正
検討したのは,南条・赤礁埼・大飯(福井県),綾部・福知山(京都府),但馬竹田・播磨・篠山・川西(兵庫県),高槻(大阪府)の10地域である.後述の層序的特徴に基づくと,ほぼ全地域で従来の層序区分を修正する必要がある.例えば,大飯〜綾部地域では大飯Cに属す大飯層(Ishiga, 1986)と淵垣層(木村, 1988)はそれぞれの最上部を上月Cに含め,但馬竹田地域の大飯層(Ishiga, 1986)は氷上Cと大飯Cに分割し,播磨地域で氷上Cに含められた山﨑層(Ishiga, 1986;栗本, 2000)は氷上Cと大飯Cに分割すべきである.
基本層序
層序区分修正の根拠として,個々に固有の特徴を持つ基本層序を示す.
砂岩卓越型は,粘板岩を僅かに挟有する塊状砂岩から構成される層厚500 m以上の層序で,単調な岩相が特徴である.上滝層(篠山地域)と島本層(高槻地域)で見られる.
泥岩砂岩型は,泥質千枚岩から砂岩に移化する厚層粗粒化の層序で構成され,両者の量比は等量か砂岩に富む.層厚は300〜500 m程度で,層序単元内ではこの層序が構造的に複数回繰返すのが特徴である.東俣C(南条地域),口上林層(綾部地域),高槻層(高槻地域)などで見られる.
チャート砕屑岩型は,下位よりチャート,泥質千枚岩,砂岩が累重する粗粒化の層序からなる.泥質千枚岩が優勢でチャートと砂岩は非常に薄い.層厚は200〜400m程度.層序単元内ではこの層序が構造的に複数回繰返すのが特徴である.堅海層(赤礁埼地域),淵垣層(綾部地域),青垣層(但馬竹田地域),柏原層(篠山地域)などを構成する.
互層型は,砂岩泥岩互層から葉理質泥岩に向けて上方細粒化する層序であり,層厚は約860 mに達する.層序の繰返しは認められない.十倉層(綾部地域)のみに見られる.
混在型は,チャートを伴う玄武岩と泥質千枚岩・砂岩からなる層序で,泥質混在岩を含む.石場層(福知山地域),上月層・土万層(播磨地域)のほか国崎C(川西地域)などで確認される.
堆積時期
上記の基本層序における付加時期を既存の化石資料から検討した結果,それぞれが特定の時代を示すことが明確になった.砂岩卓越型はAnisian期中頃,泥岩砂岩型はChanghsingian期,混在型はCapitanian期末〜Wuchiapingian期前半に限定できる.チャート砕屑岩型は問題点として指摘したように,既存資料からは堆積時期を明確にできなかった.また互層型からは産出化石の報告が無いが,既述の通りペルム紀中頃〜三畳紀中頃のジルコンU–Pb年代が報告された.今回,綾部地域の大飯Cから砕屑性ジルコンを測定したところ256.1 Maを得た.これはWuchiapingian期内に収まる値である.
Caridroit et al. (1985) Earth Sci., Ishiga (1986) Jour.Geosci.Osaka City Univ., 木村 (1988)地質雑, 栗本 (2000) 1/5万龍野図幅, Kuwahara et al. (1998) Jour.Geosci.Osaka City Univ., 坂田ほか (2017) 地質学会講演要旨, 竹村ほか(1993) 地質雑.
超丹波帯付加複合体は氷上C(C=コンプレックス),大飯C,上月Cに区分され,それらの最終堆積時期(≒付加時期)は前二者がローピンジアン世,後者がグアダルピアン世とされている(Ishiga, 1986;Caridroit et al., 1985;竹村ほか, 1993).
問題点と目的
大飯Cの付加時期はF. bipartitus–F. charveti群集でのF. scholasticus, F. charveti, F. bipartitus, A. triangularisの共産に基づいて決定され,ローピンジアン世前半(Wuchiapingian期)とされてきた(Ishiga, 1986).しかしA. triangularisは他の種と共存せず,その産出はN. optima帯に限られ,時代はローピンジアン世末(Changhsingian期後半)である(Kuwahara et al., 1998).また綾部地域では,十倉層(大飯C下部に相当)から砕屑性ジルコンの最若U–Pb年代として260〜230 Maが報告された(坂田ほか, 2017).つまり大飯Cの付加時期に関する年代論には,更なる検討を要する.本論では,近畿地方北部における従来の層序区分や放散虫化石に基づく付加時期を再検討し,大飯Cで新たに測定した砕屑性ジルコンU–Pb年代と合わせて,超丹波帯の標準層序単元の定義と堆積時期を見直す.
層序区分の修正
検討したのは,南条・赤礁埼・大飯(福井県),綾部・福知山(京都府),但馬竹田・播磨・篠山・川西(兵庫県),高槻(大阪府)の10地域である.後述の層序的特徴に基づくと,ほぼ全地域で従来の層序区分を修正する必要がある.例えば,大飯〜綾部地域では大飯Cに属す大飯層(Ishiga, 1986)と淵垣層(木村, 1988)はそれぞれの最上部を上月Cに含め,但馬竹田地域の大飯層(Ishiga, 1986)は氷上Cと大飯Cに分割し,播磨地域で氷上Cに含められた山﨑層(Ishiga, 1986;栗本, 2000)は氷上Cと大飯Cに分割すべきである.
基本層序
層序区分修正の根拠として,個々に固有の特徴を持つ基本層序を示す.
砂岩卓越型は,粘板岩を僅かに挟有する塊状砂岩から構成される層厚500 m以上の層序で,単調な岩相が特徴である.上滝層(篠山地域)と島本層(高槻地域)で見られる.
泥岩砂岩型は,泥質千枚岩から砂岩に移化する厚層粗粒化の層序で構成され,両者の量比は等量か砂岩に富む.層厚は300〜500 m程度で,層序単元内ではこの層序が構造的に複数回繰返すのが特徴である.東俣C(南条地域),口上林層(綾部地域),高槻層(高槻地域)などで見られる.
チャート砕屑岩型は,下位よりチャート,泥質千枚岩,砂岩が累重する粗粒化の層序からなる.泥質千枚岩が優勢でチャートと砂岩は非常に薄い.層厚は200〜400m程度.層序単元内ではこの層序が構造的に複数回繰返すのが特徴である.堅海層(赤礁埼地域),淵垣層(綾部地域),青垣層(但馬竹田地域),柏原層(篠山地域)などを構成する.
互層型は,砂岩泥岩互層から葉理質泥岩に向けて上方細粒化する層序であり,層厚は約860 mに達する.層序の繰返しは認められない.十倉層(綾部地域)のみに見られる.
混在型は,チャートを伴う玄武岩と泥質千枚岩・砂岩からなる層序で,泥質混在岩を含む.石場層(福知山地域),上月層・土万層(播磨地域)のほか国崎C(川西地域)などで確認される.
堆積時期
上記の基本層序における付加時期を既存の化石資料から検討した結果,それぞれが特定の時代を示すことが明確になった.砂岩卓越型はAnisian期中頃,泥岩砂岩型はChanghsingian期,混在型はCapitanian期末〜Wuchiapingian期前半に限定できる.チャート砕屑岩型は問題点として指摘したように,既存資料からは堆積時期を明確にできなかった.また互層型からは産出化石の報告が無いが,既述の通りペルム紀中頃〜三畳紀中頃のジルコンU–Pb年代が報告された.今回,綾部地域の大飯Cから砕屑性ジルコンを測定したところ256.1 Maを得た.これはWuchiapingian期内に収まる値である.
Caridroit et al. (1985) Earth Sci., Ishiga (1986) Jour.Geosci.Osaka City Univ., 木村 (1988)地質雑, 栗本 (2000) 1/5万龍野図幅, Kuwahara et al. (1998) Jour.Geosci.Osaka City Univ., 坂田ほか (2017) 地質学会講演要旨, 竹村ほか(1993) 地質雑.