[T15-P-12] Geology of the Cretaceous system in the 1:200,000 Kyoto and Osaka Quadrangle
Keywords:Geological map, Cretaceous, Sasayama Group, Kyoto, Osaka
産総研地質調査総合センターが出版する20万分の1地質図幅のうち,「京都及大阪」地域は1986年に初版が刊行された.初版刊行時は,「京都及大阪」地域内で整備済の5万分の1地質図幅は2区画だったが,その後2013年までに全16区画が整備された.現在産総研では,新しい知見を基に20万分の1地質図幅「京都及大阪」地域の改訂作業を進めている.本発表では,現時点での再検討した白亜系の地質図を示し,その内容を報告する.
地質概略
「京都及大阪」地域内の白亜系は,篠山層群,山陽帯の深成岩類・火山岩類,領家帯の変成岩類・深成岩類,岩脈類からなる.
篠山層群は,兵庫県東部の篠山盆地及びその西方に分布する陸成層である.下部の大山下層と上部の沢田層に区分され(林ほか,2017),両者は整合関係である.地質図は吉川(1993)を基に大山下層と沢田層に分けて表現した.ジルコンU–Pb年代(Kusuhashi et al., 2013; 久保見ほか,2019)から本層群の堆積は前期アルビアン期には開始し,セノマニアン期初頭まで続いていたと考えられ,化石年代(林ほか,2010)とも調和的である.
山陽帯の深成岩類は,高橋ほか(2006)を参考に編纂した.高橋ほか(2006)は,近畿中京地域に分布する山陽帯の深成岩類を貫入関係・岩相・放射年代などから6つ(山陽深成岩類I〜VI)に区分した.山陽深成岩類I〜IVは白亜紀,山陽深成岩類V〜VIは古第三紀である.本地域内の山陽帯の深成岩類は,既存の放射年代値がいずれも白亜紀を示すことから山陽深成岩類I〜IVとしてまとめた.
山陽深成岩類I:前期白亜紀の石英閃緑岩〜花崗閃緑岩.岩石学的にはアダカイトの特徴を有する.放射年代は107〜102 Maで,篠山層群沢田層と同時期である.
山陽深成岩類II:前期〜後期白亜紀の花崗岩〜花崗閃緑岩.放射年代は102〜95 Maで,本地域の後期白亜紀火山岩類より早期である.
山陽深成岩類III:後期白亜紀の花崗岩〜石英斑れい岩などからなる岩株状岩体.複合岩体を形成することもある.放射年代は82〜70 Maである.
山陽深成岩類IV:後期白亜紀の花崗岩からなる底盤状ないし餅板状の岩体.放射年代は83〜71 Maで,山陽深成岩類IIIと同時期である.
後期白亜紀火山岩類は,本地域西部にまとまって分布する.岩相・層序関係(松浦ほか,1995)及びジルコンU–Pb年代に基づき編纂した.本地域の火山岩類は,82〜80 Ma頃と80 Ma以降に形成した地層に区分され,前者は主に本地域南西部に,後者は本地域西端に分布する.これらは流紋岩火砕岩を主体とし,安山岩火砕岩・溶岩・岩脈,流紋岩溶岩・岩脈,砕屑岩も認められる.放射年代は82〜74 Ma頃で,カンパニアン期に当たる.
領家深成岩類は,本地域南部に分布し,後期白亜紀の高温低圧型変成作用により生じた変成岩類の構造と調和及び非調和に貫入する.高橋ほか(2006)を参考に編纂した.高橋ほか(2006)は,近畿中京地域の領家深成岩類を鉱物の配列による面構造の程度・貫入(捕獲)関係・産状などから4つ(領家深成岩類I〜IV)に区分した.貫入関係から領家深成岩類Iが下位,IVが上位となるが,放射年代値に明瞭な差は認められない.
領家深成岩類I:顕著な面構造を有し,領家変成岩類の構造に調和的に貫入する.トーナル岩・花崗閃緑岩・花崗岩からなる.
領家深成岩類II:一般に弱い面構造を有し,領家変成岩類の構造に非調和に貫入する.本図幅ではさらに,斑状を呈する花崗岩〜花崗閃緑岩体,主に花崗閃緑岩〜花崗岩からなる岩体,主に花崗岩からなる岩体に細区分した.
領家深成岩類III:一般に塊状で,一部弱い面構造を有する花崗閃緑岩〜トーナル岩からなり,岩株状に産する.
領家深成岩類IV:一般に塊状で,一部弱い面構造を有する花崗岩からなる.
岩脈類は,上述の山陽帯・領家帯の火成岩類に含められていない小規模なものを他の火成岩類との地質学的な関係や放射年代を参考に岩脈I(前期白亜紀の苦鉄質岩脈)・岩脈II(後期白亜紀中頃の苦鉄質岩脈)・岩脈III(それ以外の後期白亜紀後半の苦鉄質岩脈と珪長質岩脈)に区分した.ただし,本地域の岩脈類は一般に脈幅10 m未満のため地質図では大部分が省略される.
引用文献
林ほか(2010)地質雑,116,283–286.
林ほか(2017)地質雑,123,747–764.
久保見ほか(2019)地質学会第126年学術大会要旨,R5-P-8.
Kusuhashi et al. (2013) Proc. R. Soc. B, 280, 20130142.
松浦ほか(1995)5万分の1地質図幅「広根」,110p.
高橋ほか(2006)地調研究資料集,no. 439,7p.
吉川(1993)地質雑,99,29–38.
地質概略
「京都及大阪」地域内の白亜系は,篠山層群,山陽帯の深成岩類・火山岩類,領家帯の変成岩類・深成岩類,岩脈類からなる.
篠山層群は,兵庫県東部の篠山盆地及びその西方に分布する陸成層である.下部の大山下層と上部の沢田層に区分され(林ほか,2017),両者は整合関係である.地質図は吉川(1993)を基に大山下層と沢田層に分けて表現した.ジルコンU–Pb年代(Kusuhashi et al., 2013; 久保見ほか,2019)から本層群の堆積は前期アルビアン期には開始し,セノマニアン期初頭まで続いていたと考えられ,化石年代(林ほか,2010)とも調和的である.
山陽帯の深成岩類は,高橋ほか(2006)を参考に編纂した.高橋ほか(2006)は,近畿中京地域に分布する山陽帯の深成岩類を貫入関係・岩相・放射年代などから6つ(山陽深成岩類I〜VI)に区分した.山陽深成岩類I〜IVは白亜紀,山陽深成岩類V〜VIは古第三紀である.本地域内の山陽帯の深成岩類は,既存の放射年代値がいずれも白亜紀を示すことから山陽深成岩類I〜IVとしてまとめた.
山陽深成岩類I:前期白亜紀の石英閃緑岩〜花崗閃緑岩.岩石学的にはアダカイトの特徴を有する.放射年代は107〜102 Maで,篠山層群沢田層と同時期である.
山陽深成岩類II:前期〜後期白亜紀の花崗岩〜花崗閃緑岩.放射年代は102〜95 Maで,本地域の後期白亜紀火山岩類より早期である.
山陽深成岩類III:後期白亜紀の花崗岩〜石英斑れい岩などからなる岩株状岩体.複合岩体を形成することもある.放射年代は82〜70 Maである.
山陽深成岩類IV:後期白亜紀の花崗岩からなる底盤状ないし餅板状の岩体.放射年代は83〜71 Maで,山陽深成岩類IIIと同時期である.
後期白亜紀火山岩類は,本地域西部にまとまって分布する.岩相・層序関係(松浦ほか,1995)及びジルコンU–Pb年代に基づき編纂した.本地域の火山岩類は,82〜80 Ma頃と80 Ma以降に形成した地層に区分され,前者は主に本地域南西部に,後者は本地域西端に分布する.これらは流紋岩火砕岩を主体とし,安山岩火砕岩・溶岩・岩脈,流紋岩溶岩・岩脈,砕屑岩も認められる.放射年代は82〜74 Ma頃で,カンパニアン期に当たる.
領家深成岩類は,本地域南部に分布し,後期白亜紀の高温低圧型変成作用により生じた変成岩類の構造と調和及び非調和に貫入する.高橋ほか(2006)を参考に編纂した.高橋ほか(2006)は,近畿中京地域の領家深成岩類を鉱物の配列による面構造の程度・貫入(捕獲)関係・産状などから4つ(領家深成岩類I〜IV)に区分した.貫入関係から領家深成岩類Iが下位,IVが上位となるが,放射年代値に明瞭な差は認められない.
領家深成岩類I:顕著な面構造を有し,領家変成岩類の構造に調和的に貫入する.トーナル岩・花崗閃緑岩・花崗岩からなる.
領家深成岩類II:一般に弱い面構造を有し,領家変成岩類の構造に非調和に貫入する.本図幅ではさらに,斑状を呈する花崗岩〜花崗閃緑岩体,主に花崗閃緑岩〜花崗岩からなる岩体,主に花崗岩からなる岩体に細区分した.
領家深成岩類III:一般に塊状で,一部弱い面構造を有する花崗閃緑岩〜トーナル岩からなり,岩株状に産する.
領家深成岩類IV:一般に塊状で,一部弱い面構造を有する花崗岩からなる.
岩脈類は,上述の山陽帯・領家帯の火成岩類に含められていない小規模なものを他の火成岩類との地質学的な関係や放射年代を参考に岩脈I(前期白亜紀の苦鉄質岩脈)・岩脈II(後期白亜紀中頃の苦鉄質岩脈)・岩脈III(それ以外の後期白亜紀後半の苦鉄質岩脈と珪長質岩脈)に区分した.ただし,本地域の岩脈類は一般に脈幅10 m未満のため地質図では大部分が省略される.
引用文献
林ほか(2010)地質雑,116,283–286.
林ほか(2017)地質雑,123,747–764.
久保見ほか(2019)地質学会第126年学術大会要旨,R5-P-8.
Kusuhashi et al. (2013) Proc. R. Soc. B, 280, 20130142.
松浦ほか(1995)5万分の1地質図幅「広根」,110p.
高橋ほか(2006)地調研究資料集,no. 439,7p.
吉川(1993)地質雑,99,29–38.