[T15-P-14] Stratigraphy and geological structure of the Nikoro Group accretionary complex (Tokoro Belt) and basal parts of the Cenozoic cover sequence in the Memanbetsu area, Hokkaido, Japan.
【はじめに】著者らは北海道東部の女満別地域において,2019年度から5万分の1地質図幅のための地質調査を行っている.当図幅地域の大部分は新生界の分布域であるが,地域北西部における常呂山周辺の南北7 km×東西5 kmの範囲では,基盤の中生界である常呂帯仁頃層群が連続的または被覆層の下位に窓状に分布する.本発表では,これまでの調査や分析に基づいて作成した地質図案を提示しながら,仁頃層群および不整合直上の新生界被覆層の基底付近の岩相層序区分,およびこれらの地層がとる地質構造を紹介する予定である.
【仁頃層群の層序と構造】仁頃層群はおもに緑色岩とチャートを主体とする付加体である.部分的に残る層序関係と年代に基づき,今回以下の3つに層序区分した(層序ユニット名はいずれも仮称).最下部のポン幌内川層は玄武岩,ドレライト,およびトラカイトと同質貫入岩(閃長岩)を主体とする.閃長岩からは後期ジュラ紀のジルコンU-Pb年代が得られた.上位の知来層は赤色チャートを主体とし,ジュラ紀末から前期白亜紀の放散虫化石が報告されている.最上位の常呂山層はおもに赤色の泥岩~珪質泥岩,暗緑色または暗紫灰色の火山砕屑性砂岩,および赤色泥岩を基質とする含礫泥岩で構成される.砂岩からは後期白亜紀早期の最若ピーク年代が得られた.含礫泥岩には,玄武岩のほか,チャート,安山岩~デイサイト,花崗質岩,角閃岩などの岩塊や砕屑粒子も含まれる.以上の3層は海洋地殻の火成基盤(ポン幌内川層)から遠洋性深海堆積物(知来層)を経て海溝堆積物(常呂山層)に至る一種の海洋プレート層序を構成すると捉えられる.そしてこれらの岩相・層序がある程度の側方連続性を維持しながら複雑に繰り返すことから,全体として覆瓦構造を構成していると考えれられる.調査地域の北半(福山構造ユニット)では変形と原層序の分断が進行し,繰り返し構造の境界部には頻繁に混在相が出現する.混在相は赤色と緑色の苦鉄質カタクレーサイト,赤色泥岩,レンズ状のチャートなど基本的に上記3層の構成岩類で構成され,強い剪断劈開を有する.当構造ユニットの層理面は東西走向北傾斜を基本構造とするが,南北方向に軸を持つ正立褶曲によりアコーディオン状に折りたたまれている.南半部(日吉構造ユニット)では変形が弱い緑色岩の整然相が連続する傾向があり,混在相は出現頻度も層厚も小さい.層理面は大局的に北または南に比較的低角で傾斜した基本構造が南北軸の褶曲で座屈している.
【新生界被覆層の基底部の層序】被覆層は大局的には礫岩から砂岩を経て泥岩に至る上方細粒化を示し,それぞれ北隣の網走図幅地域における常呂層のトコロ幌内川礫岩部層,豊浜砂岩部層~ニタテヨコツナイ川泥質砂岩部層,および能取シルト岩部層に対比される.網走図幅地域の豊浜砂岩部層と能取シルト岩部層中の凝灰岩からは前期中新世の約21~20 MaのジルコンU-Pb/FT年代が報告されている.トコロ幌内川礫岩部層の主部は円礫岩で構成され部分的に海棲貝化石を含むが,基底部に陸成層とみられる不淘汰角礫岩や亜炭を伴う泥岩層を伴う部分がある.今回,豊浜砂岩部層の基底部に海緑石砂岩の層準が見いだされ,この海緑石砂岩の試料からは前期漸新世およびこれより古い砕屑性ジルコンのみを産した.また,トコロ幌内川礫岩部層の基底部に近い不淘汰角礫岩層に挟在する砂岩から得られた砕屑性ジルコンのU-Pb年代が,約37 Maの最若ピークを示した.これらのことから,トコロ幌内川礫岩部層と豊浜砂岩部層の間に10 m.y.以上の無堆積期間がある可能性があり,前者が古第三系であることが示唆される.
【新生界の構造】 当地域の仁頃層群中で支配的な南北軸を持つ座屈褶曲は新生界には全く及んでおらず,トコロ幌内川礫岩部層の堆積より古い構造であろう.古地磁気から根室帯西縁部と常呂帯は後期始新世までに基盤が時計回りに回転したことが知られているが,南北系の褶曲はこの回転運動に伴う東西短縮で形成されたのかもしれない.新生界のうち,比較的よく追跡できる豊浜砂岩部層の基底面の高度は,北東-南西系の軸をもつ褶曲と,これに高角で交わる北西-南東系の胴切り断層や撓曲によって変化する.この褶曲構造は円筒状よりは箱型に近く,露頭スケールの側方短縮変形を伴わないことから,座屈褶曲よりはブロック化した基盤の昇降に伴う曲げ褶曲の可能性が高いと思われる.当褶曲構造の形成時期の上限は不明だが,そのトレンドから千島海盆の形成に関連するかもしれない.
【仁頃層群の層序と構造】仁頃層群はおもに緑色岩とチャートを主体とする付加体である.部分的に残る層序関係と年代に基づき,今回以下の3つに層序区分した(層序ユニット名はいずれも仮称).最下部のポン幌内川層は玄武岩,ドレライト,およびトラカイトと同質貫入岩(閃長岩)を主体とする.閃長岩からは後期ジュラ紀のジルコンU-Pb年代が得られた.上位の知来層は赤色チャートを主体とし,ジュラ紀末から前期白亜紀の放散虫化石が報告されている.最上位の常呂山層はおもに赤色の泥岩~珪質泥岩,暗緑色または暗紫灰色の火山砕屑性砂岩,および赤色泥岩を基質とする含礫泥岩で構成される.砂岩からは後期白亜紀早期の最若ピーク年代が得られた.含礫泥岩には,玄武岩のほか,チャート,安山岩~デイサイト,花崗質岩,角閃岩などの岩塊や砕屑粒子も含まれる.以上の3層は海洋地殻の火成基盤(ポン幌内川層)から遠洋性深海堆積物(知来層)を経て海溝堆積物(常呂山層)に至る一種の海洋プレート層序を構成すると捉えられる.そしてこれらの岩相・層序がある程度の側方連続性を維持しながら複雑に繰り返すことから,全体として覆瓦構造を構成していると考えれられる.調査地域の北半(福山構造ユニット)では変形と原層序の分断が進行し,繰り返し構造の境界部には頻繁に混在相が出現する.混在相は赤色と緑色の苦鉄質カタクレーサイト,赤色泥岩,レンズ状のチャートなど基本的に上記3層の構成岩類で構成され,強い剪断劈開を有する.当構造ユニットの層理面は東西走向北傾斜を基本構造とするが,南北方向に軸を持つ正立褶曲によりアコーディオン状に折りたたまれている.南半部(日吉構造ユニット)では変形が弱い緑色岩の整然相が連続する傾向があり,混在相は出現頻度も層厚も小さい.層理面は大局的に北または南に比較的低角で傾斜した基本構造が南北軸の褶曲で座屈している.
【新生界被覆層の基底部の層序】被覆層は大局的には礫岩から砂岩を経て泥岩に至る上方細粒化を示し,それぞれ北隣の網走図幅地域における常呂層のトコロ幌内川礫岩部層,豊浜砂岩部層~ニタテヨコツナイ川泥質砂岩部層,および能取シルト岩部層に対比される.網走図幅地域の豊浜砂岩部層と能取シルト岩部層中の凝灰岩からは前期中新世の約21~20 MaのジルコンU-Pb/FT年代が報告されている.トコロ幌内川礫岩部層の主部は円礫岩で構成され部分的に海棲貝化石を含むが,基底部に陸成層とみられる不淘汰角礫岩や亜炭を伴う泥岩層を伴う部分がある.今回,豊浜砂岩部層の基底部に海緑石砂岩の層準が見いだされ,この海緑石砂岩の試料からは前期漸新世およびこれより古い砕屑性ジルコンのみを産した.また,トコロ幌内川礫岩部層の基底部に近い不淘汰角礫岩層に挟在する砂岩から得られた砕屑性ジルコンのU-Pb年代が,約37 Maの最若ピークを示した.これらのことから,トコロ幌内川礫岩部層と豊浜砂岩部層の間に10 m.y.以上の無堆積期間がある可能性があり,前者が古第三系であることが示唆される.
【新生界の構造】 当地域の仁頃層群中で支配的な南北軸を持つ座屈褶曲は新生界には全く及んでおらず,トコロ幌内川礫岩部層の堆積より古い構造であろう.古地磁気から根室帯西縁部と常呂帯は後期始新世までに基盤が時計回りに回転したことが知られているが,南北系の褶曲はこの回転運動に伴う東西短縮で形成されたのかもしれない.新生界のうち,比較的よく追跡できる豊浜砂岩部層の基底面の高度は,北東-南西系の軸をもつ褶曲と,これに高角で交わる北西-南東系の胴切り断層や撓曲によって変化する.この褶曲構造は円筒状よりは箱型に近く,露頭スケールの側方短縮変形を伴わないことから,座屈褶曲よりはブロック化した基盤の昇降に伴う曲げ褶曲の可能性が高いと思われる.当褶曲構造の形成時期の上限は不明だが,そのトレンドから千島海盆の形成に関連するかもしれない.