[T15-P-24] Reconstruction of paleoenvironment of Miocene volcaniclastic rocks and clastic rocks in the northern part of hyogo, San’in Kaigan Geopark, based on facies analysis.
Keywords:facies analysis, subaqueous volcanic rocks, Miocene, volcaniclastic rocks, Hokutan Group
兵庫県北部を中心に分布する北但層群は日本海拡大期を記録した一連の地層からなり,当時のマグマティズムとテクトニクスを解明するうえで重要な地層群である.しかし従来,北但層群に関する地質学的研究は,一部を除いて層序学的なものに限られ(弘原海ほか,1966など),堆積環境や火山活動の詳細は未だ明らかにされていない.そこで本研究では但馬御火浦周辺に分布する北但層群を対象に岩相解析を行い,古環境を復元するとともに層序学的な位置づけを行うためにU-Pb年代測定を実施した.
<但馬御火浦-浜坂エリアに分布する北但層群の堆積相>
岩相解析の結果,火山岩類は主に溶岩・岩脈として産することが明らかとなった.溶岩は陸上噴出のものと水中噴出のものに分けられ側方及び上方で火山砕屑岩類へ遷移する. 火山砕屑岩類は陸上自破砕溶岩やハイアロクラスタイト,水中軽石流堆積物等の初生的なものと,一度定置した溶岩類や火山砕屑岩類が再堆積したタービダイト,重力流堆積物など二次堆積性のものに分けられる.ハイアロクラスタイトは,ジグソーフィット構造が発達するものと,ジグソーフィット構造が発達せず成層するタイプに分けられる.前者は溶岩類から遷移する場合があり,後者は偽枕状溶岩を含むことがある.以上の岩相の特徴から,前者は原地性のハイアロクラスタイトと,後者は前者が水中土石流等で再堆積した再堆積のハイアロクラスタイトと解釈した. 砕屑岩類は主に河川堆積物,三角州堆積物,海成堆積物に分けられる.河川堆積物は,トラフ型斜交層理の発達する礫岩で,上方で細粒化し,一部でトラフ型斜交層理の発達する砂岩へ遷移する.三角州堆積物は,平行葉理やフォーセット葉理,ウェーブリップルなどの堆積構造が認められる砂岩泥岩互層で,弱成層した礫岩へと遷移する.海成堆積物は炭質物を含み級化構造やコンボリュート層理が認められる砂岩泥岩互層である.
<層序と堆積相>
調査地域に分布する北但層群は,下位から基盤を不整合で覆う八鹿層,八鹿層を不整合に覆う豊岡層に分けられる(兵庫県,1996).後述するように従来豊岡層とされていた層準における年代測定値が豊岡層上位の網野層の年代値と一致したため,それらの層準の堆積相については網野層相当層として記載する. 調査地域のうち,八鹿層分布域の西部は,安山岩質のハイアロクラスタイトおよび溶岩類からなり,水中火山を形成していたものと考えられる.八鹿層の東部は主に安山岩質の溶岩やラハール堆積物を主体とする.これらは著しく赤色酸化しており,陸上での火山活動が示唆される.北東部ほど上位という地質構造から水中から陸上へと堆積環境の変化があったと考えられる.豊岡層は河川堆積物を主体とする.網野層相当層は分布域の北西部で三角州堆積物や偽枕状溶岩を含む珪長質水中軽石流堆積物,分布域北東部で偽枕状溶岩を含む安山岩質ハイアロクラスタイトと溶岩類,海成堆積物,泥岩の偽礫を含み二重級化構造の見られる珪長質水中軽石流堆積物からなる.分布域南部は浅海成堆積物を主体とする.網野層相当層の南部と北部の岩相は同時異相であると考えられ,北部に水中火山が存在していたと考えられる.
<U-Pb年代>
兵庫県香美町余部および新温泉町三尾に分布する従来豊岡層とされる軽石流堆積物からジルコンを抽出し,U-Pb年代測定を行った結果,15.43±0.12Maと15.4±0.2Maを得た.羽地・山路(2019)は本地域の約30km南方の地域の示準化石およびジルコン年代に基づき,豊岡層が17.0~16.5Maに,その上位の村岡層を16.5Ma以降に堆積したと推定した.村岡層は、丹後半島の火山砕屑岩類及び砂岩泥岩互層を主とする網野層に対比される.網野層からは16~14 Ma の放射年代値が報告されており(山元・星住,1988; 辻野, 2019),今回年代測定を行った層準は放射年代値と岩相から網野層に対比する必要がある.
<まとめ>
兵庫県北部但馬御火浦周辺に分布する北但層群の砕屑岩類等を対象に堆積相解析を行った結果,八鹿層堆積時に水中および陸上の火山が,豊岡層と網野層相当層の堆積時に水中の火山が活動していたことが分かった.U-Pb年代測定を行った結果従来豊岡層とされていたものが網野層と比較される可能性が示唆された.
羽地 俊樹, 山路 敦,2019.地質雑,125, 9, 685-698.
兵庫県, 1996. 兵庫県まちづくり技術センター, 236p.
辻野 匠,2019. 地質学会第126年学術大会講演要旨.
弘原海清ほか,1966,松下進教授記念論文集,105-116.
山元 孝広, 星住 英夫, 1988.地質雑, 94, 10, 769-781.
<但馬御火浦-浜坂エリアに分布する北但層群の堆積相>
岩相解析の結果,火山岩類は主に溶岩・岩脈として産することが明らかとなった.溶岩は陸上噴出のものと水中噴出のものに分けられ側方及び上方で火山砕屑岩類へ遷移する. 火山砕屑岩類は陸上自破砕溶岩やハイアロクラスタイト,水中軽石流堆積物等の初生的なものと,一度定置した溶岩類や火山砕屑岩類が再堆積したタービダイト,重力流堆積物など二次堆積性のものに分けられる.ハイアロクラスタイトは,ジグソーフィット構造が発達するものと,ジグソーフィット構造が発達せず成層するタイプに分けられる.前者は溶岩類から遷移する場合があり,後者は偽枕状溶岩を含むことがある.以上の岩相の特徴から,前者は原地性のハイアロクラスタイトと,後者は前者が水中土石流等で再堆積した再堆積のハイアロクラスタイトと解釈した. 砕屑岩類は主に河川堆積物,三角州堆積物,海成堆積物に分けられる.河川堆積物は,トラフ型斜交層理の発達する礫岩で,上方で細粒化し,一部でトラフ型斜交層理の発達する砂岩へ遷移する.三角州堆積物は,平行葉理やフォーセット葉理,ウェーブリップルなどの堆積構造が認められる砂岩泥岩互層で,弱成層した礫岩へと遷移する.海成堆積物は炭質物を含み級化構造やコンボリュート層理が認められる砂岩泥岩互層である.
<層序と堆積相>
調査地域に分布する北但層群は,下位から基盤を不整合で覆う八鹿層,八鹿層を不整合に覆う豊岡層に分けられる(兵庫県,1996).後述するように従来豊岡層とされていた層準における年代測定値が豊岡層上位の網野層の年代値と一致したため,それらの層準の堆積相については網野層相当層として記載する. 調査地域のうち,八鹿層分布域の西部は,安山岩質のハイアロクラスタイトおよび溶岩類からなり,水中火山を形成していたものと考えられる.八鹿層の東部は主に安山岩質の溶岩やラハール堆積物を主体とする.これらは著しく赤色酸化しており,陸上での火山活動が示唆される.北東部ほど上位という地質構造から水中から陸上へと堆積環境の変化があったと考えられる.豊岡層は河川堆積物を主体とする.網野層相当層は分布域の北西部で三角州堆積物や偽枕状溶岩を含む珪長質水中軽石流堆積物,分布域北東部で偽枕状溶岩を含む安山岩質ハイアロクラスタイトと溶岩類,海成堆積物,泥岩の偽礫を含み二重級化構造の見られる珪長質水中軽石流堆積物からなる.分布域南部は浅海成堆積物を主体とする.網野層相当層の南部と北部の岩相は同時異相であると考えられ,北部に水中火山が存在していたと考えられる.
<U-Pb年代>
兵庫県香美町余部および新温泉町三尾に分布する従来豊岡層とされる軽石流堆積物からジルコンを抽出し,U-Pb年代測定を行った結果,15.43±0.12Maと15.4±0.2Maを得た.羽地・山路(2019)は本地域の約30km南方の地域の示準化石およびジルコン年代に基づき,豊岡層が17.0~16.5Maに,その上位の村岡層を16.5Ma以降に堆積したと推定した.村岡層は、丹後半島の火山砕屑岩類及び砂岩泥岩互層を主とする網野層に対比される.網野層からは16~14 Ma の放射年代値が報告されており(山元・星住,1988; 辻野, 2019),今回年代測定を行った層準は放射年代値と岩相から網野層に対比する必要がある.
<まとめ>
兵庫県北部但馬御火浦周辺に分布する北但層群の砕屑岩類等を対象に堆積相解析を行った結果,八鹿層堆積時に水中および陸上の火山が,豊岡層と網野層相当層の堆積時に水中の火山が活動していたことが分かった.U-Pb年代測定を行った結果従来豊岡層とされていたものが網野層と比較される可能性が示唆された.
羽地 俊樹, 山路 敦,2019.地質雑,125, 9, 685-698.
兵庫県, 1996. 兵庫県まちづくり技術センター, 236p.
辻野 匠,2019. 地質学会第126年学術大会講演要旨.
弘原海清ほか,1966,松下進教授記念論文集,105-116.
山元 孝広, 星住 英夫, 1988.地質雑, 94, 10, 769-781.