[T15-P-25] (entry) U–Pb ages of zircons from Jyuniko Tuff, Western Coast of Tsugaru, Aomori Prefecture
Keywords:Miocene, Zircon, West Coast of Tsugaru, U–Pb age, Jyuniko Tuff
津軽西海岸には“グリーンタフ” と呼ばれる中新世の火砕岩・火山岩が広範囲に分布している (例えば, 鹿野, 2018). 同西岸域に位置する深浦地域の中新統は, 先第三紀の花崗岩類を基盤とし, 下位から藤倉川層, 大戸瀬層, 田野沢層, 大童子層, 赤石層からなり, 本研究対象である十二湖凝灰岩は大童子層と指交関係にあるとされている (盛谷, 1968). 根本・吉田 (2007)は十二湖凝灰岩を構成する軽石凝灰岩と流紋岩のK–Ar年代測定を行い, 笹内川の軽石凝灰岩から10.1 ± 0.6 Ma (2σ)および10.9 ± 0.8 Ma (2σ), 小峰川の流紋岩から11.2 ± 1.2 Ma (2σ) を得た. さらに, 微化石に基づく赤石層と大童子層の境界年代が11.5 – 7.9 Ma (例えば, 根本・鎌田, 2005) であることから, 十二湖凝灰岩は赤石層下部と同時異相の関係にあると論じた. 一方, 笹内川の軽石凝灰岩から得らえたK-Ar 年代結果は同一試料の結果であるにも関わらず年代幅が大きいことから根本・吉田 (2007)が分析した試料の一部は変質作用によりAr損失もしくは過剰Arの影響を受けている可能性が示唆される. そこで本研究では変質作用の影響をほとんど受けないジルコンのU–Pb 年代法を用いて十二湖凝灰岩の形成年代について再検討を行った. 試料は十二湖凝灰岩上部の笹内川下流域の軽石凝灰岩 (PT01) と十二湖凝灰岩中部の流紋岩質角礫岩 (RB02) である. 併せて, 汐ヶ島付近の海岸域からNW–SE方向に発達し, 十二湖凝灰岩に貫入する流紋岩質岩脈 (RD03) についても採取し, U-Pb 年代測定を行った. 測定には東京大学大学院理学系研究科地殻化学研究施設設置のフェムト秒レーザーアブレーション多重検出器型ICP質量分析装置を用いた.
今回得られた結果のうち, 十二湖凝灰岩中部から採取したRB02の238U–206Pb年代の加重平均は12.05 ± 0.04 Ma (2σ)であり, これに貫入するRD03の加重平均は12.03 ± 0.08 Ma (2σ) であった. 両者の形成年代はほぼ同時であることから, 同貫入岩は十二湖凝灰岩主要部のフィーダーダイクと考えられる. 十二湖凝灰岩上部から採取した238U–206Pb年代値は12 Maと109 Maにピークを持つバイモーダルな年代分布を示した. また, 12 Maの主要ピークは13 – 10 Maの年代幅を持ち, 非混合アルゴリズムに基づく解析から10.55 ± 0.24 Ma (2σ)と12.24 ± 0.08 Ma (2σ)の年代値を得た. このことから, PT01の噴出年代は10.5 Maと近似でき, 根本・吉田 (2007)より報告された笹内川流域の軽石凝灰岩のK–Ar年代値と誤差範囲で一致した. PT01中の12 Maと109 Maの年代を示すジルコンは10.5 Maの噴火活動の際に取り込まれた外来ジルコンであり, 前者は十二湖凝灰岩主要部, 後者は基盤岩の白神山地花崗岩類起源 (早坂ほか, 2015) と考えられる. 以上のことから, 十二湖凝灰岩の火成活動は少なくとも2回あり, 主要部をなす流紋岩質溶岩・角礫岩は12.2 – 12.0 Maに形成され, 約2 m.y. の休止期を挟んで10.5 Maに軽石凝灰岩が形成されたことが明らかになった. 今回分析したPT01中には12 Maを示す外来ジルコンが大量に混在することから, その噴出源は十二湖凝灰岩主要部と重複すると考えられる. 今回の結果をふまえて十二湖凝灰岩と大童子層, 赤石層との層序関係を検討すると, 十二湖凝灰岩主要部の流紋岩質溶岩・角礫岩は大童子層上部と指交関係にあり, 十二湖凝灰岩の軽石凝灰岩は赤石層下部に狭在することが示唆される. これは十二湖凝灰岩が大童子層上部と同時異相の関係にあるとする盛谷 (1968)と, 赤石層下部と同時異相の関係にあるとする箕浦ほか (1998)や根本・吉田 (2007)の主張とも矛盾しない結果である.
なお, PT01については, 年代測定を行った95%のジルコンが外来起源と考えられることから, 同一ジルコンを用いたFT年代測定を行うことにより, 外来ジルコンが10.5 Maに完全リセットされているか, あるいは部分的再加熱なのかを確認する予定である.
引用文献:鹿野 (2018) 地質学雑誌, 124, 781 – 803. 根本・鎌田 (2005) 日本の地質増補版. 根本・吉田 (2007) 白神研究, 4, 11 – 14. 早坂ほか (2015) 日本地質学会学術大会講演要旨. 箕浦ほか (1998) 青森県の地質. 盛谷 (1968) 5万分の1地質図幅説明書「深浦」
今回得られた結果のうち, 十二湖凝灰岩中部から採取したRB02の238U–206Pb年代の加重平均は12.05 ± 0.04 Ma (2σ)であり, これに貫入するRD03の加重平均は12.03 ± 0.08 Ma (2σ) であった. 両者の形成年代はほぼ同時であることから, 同貫入岩は十二湖凝灰岩主要部のフィーダーダイクと考えられる. 十二湖凝灰岩上部から採取した238U–206Pb年代値は12 Maと109 Maにピークを持つバイモーダルな年代分布を示した. また, 12 Maの主要ピークは13 – 10 Maの年代幅を持ち, 非混合アルゴリズムに基づく解析から10.55 ± 0.24 Ma (2σ)と12.24 ± 0.08 Ma (2σ)の年代値を得た. このことから, PT01の噴出年代は10.5 Maと近似でき, 根本・吉田 (2007)より報告された笹内川流域の軽石凝灰岩のK–Ar年代値と誤差範囲で一致した. PT01中の12 Maと109 Maの年代を示すジルコンは10.5 Maの噴火活動の際に取り込まれた外来ジルコンであり, 前者は十二湖凝灰岩主要部, 後者は基盤岩の白神山地花崗岩類起源 (早坂ほか, 2015) と考えられる. 以上のことから, 十二湖凝灰岩の火成活動は少なくとも2回あり, 主要部をなす流紋岩質溶岩・角礫岩は12.2 – 12.0 Maに形成され, 約2 m.y. の休止期を挟んで10.5 Maに軽石凝灰岩が形成されたことが明らかになった. 今回分析したPT01中には12 Maを示す外来ジルコンが大量に混在することから, その噴出源は十二湖凝灰岩主要部と重複すると考えられる. 今回の結果をふまえて十二湖凝灰岩と大童子層, 赤石層との層序関係を検討すると, 十二湖凝灰岩主要部の流紋岩質溶岩・角礫岩は大童子層上部と指交関係にあり, 十二湖凝灰岩の軽石凝灰岩は赤石層下部に狭在することが示唆される. これは十二湖凝灰岩が大童子層上部と同時異相の関係にあるとする盛谷 (1968)と, 赤石層下部と同時異相の関係にあるとする箕浦ほか (1998)や根本・吉田 (2007)の主張とも矛盾しない結果である.
なお, PT01については, 年代測定を行った95%のジルコンが外来起源と考えられることから, 同一ジルコンを用いたFT年代測定を行うことにより, 外来ジルコンが10.5 Maに完全リセットされているか, あるいは部分的再加熱なのかを確認する予定である.
引用文献:鹿野 (2018) 地質学雑誌, 124, 781 – 803. 根本・鎌田 (2005) 日本の地質増補版. 根本・吉田 (2007) 白神研究, 4, 11 – 14. 早坂ほか (2015) 日本地質学会学術大会講演要旨. 箕浦ほか (1998) 青森県の地質. 盛谷 (1968) 5万分の1地質図幅説明書「深浦」