130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T15[Topic Session]Regional geology and stratigraphy: review and prospect

[3poster48-73] T15[Topic Session]Regional geology and stratigraphy: review and prospect

Tue. Sep 19, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T15_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T15-P-28] (entry) Geology of the Aratozawa area, Miyagi prefecture, Japan

【ハイライト講演】

*Yuga MITO1, Reishi TAKASHIMA2, Yuji ORIHASHI3, Azumi KUROYANAGI2, Yoshihiro ASAHARA4 (1. Institute of Geology and Paleontology, Graduate School of Science, Tohoku University, 2. The Center for Academic Resources and Archives Tohoku University Museum, 3. Graduate School of Science and Technology, Hirosaki University, 4. Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University)

世話人よりハイライトの紹介:本地域は2008年岩手・宮城内陸地震による大規模地すべりで知られる地域であり,中新世から第四紀の多様な火山岩が分布している.火山岩が複雑に分布する地域の層序を構築することはたいへんにむつかしいが,本邦の脊梁域には広く分布しており,防災や開発の上での地質情報は必要である.本発表では岩相観察に加えて年代分析や燐灰石の微量元素組成分析から確度の高い層序を構築するものである.※ハイライトとは

Keywords:Late Miocene, Pleistocene, Onomatsuzawa formation, Kitagawa tuff, Apatite, U-Pb radiometric age

はじめに
荒砥沢地域は2008年に発生した岩手・宮城内陸地震によって,大規模地すべりが発生した地域として知られている.本地域の地質は,下部が火砕流起源の軽石質凝灰岩や湖成の堆積岩類など軟質な岩石から構成され,その上に重くて緻密な厚い溶結凝灰岩(北川凝灰岩)が重なるキャップロック構造となっている.このような構造が大規模な地滑りを引き起こす大きな要因と考えられ,同地域の地すべりの発生メカニズムに関する研究がこれまで盛んにおこなわれてきた((社)地盤工学会 2008 年岩手・宮城内陸地震災害調査委員会,2010).しかし,本地域に分布する火砕流堆積物は,中新世後期と推定されている小野松沢層から,第四紀の北川凝灰岩まで様々な年代を示しており,これらの地層の層序学的検討はあまり行われてこなかったことから,各火砕流堆積物の給源・対比に不明な点が多く残されている.本研究では,荒砥沢地域において野外調査を実施し,本地域の基盤となる小野松沢層とその上位の軽石凝灰岩,湖成堆積物,溶結凝灰岩の岩相層序,放射年代,アパタイト微量元素組成について検討した.

層序概説
小野松沢層:本層は主に軽石凝灰岩,細粒凝灰岩,土石流堆積物からなり,本層分布域には安山岩質の貫入岩類が多数伴われる. 軽石凝灰岩・湖成層:小野松沢層と北川凝灰岩に挟まるこれらの地層は,まだ地層名が命名されていない.小野松沢層とは断層を介して接している.岩相は塊状の軽石凝灰岩,葉理の発達する軽石凝灰岩からなり,植物化石を含むシルト岩と砂岩の互層を伴う. 北川凝灰岩:本層は主に溶結凝灰岩からなり,下位の軽石凝灰岩をほぼ水平に覆う.本地域と隣接する岩ケ崎地域では,下位より池月凝灰岩,下山里凝灰岩,荷坂凝灰岩,柳沢凝灰岩の4つの火砕流堆積物に区分される(土谷ほか,1997).このうち,荒砥沢地域に分布する北川凝灰岩は,池月凝灰岩に対比される(大場・林,2008).

放射年代  
本地域の北川凝灰岩の溶結凝灰岩と,その下位の軽石凝灰岩は,斜長石のK-Ar年代測定(蒜山地質年代研究所)結果によると,それぞれ1.31±0.04 Maと1.36±0.31 Maとなり,両者の間に大きな時間間隙は見られないことが分かった.この年代値は,岩ケ崎地域の池月凝灰岩の年代(0.25±0.08 Ma:土谷ほか,1997)と一致しない.一方,小野松沢層の細粒凝灰岩から得られたジルコンのU-Pb年代は,6.67±0.17 Maであった.この年代値は小野松沢層の植物化石を基に推定されてきた年代(6-8 Ma:北村(編),1986)と調和的である.

アパタイト微量元素組成  
本調査地域には数多くの凝灰岩が分布し,その一部は溶結や変質を被っているために,アパタイト微量元素組成を用いて,各凝灰岩の識別と対比を行った.その結果,小野松沢層と池月凝灰岩に対比されてきた溶結凝灰岩の間に挟まる軽石凝灰岩は,組成の異なる複数の凝灰岩からなることが明らかになった.また,この溶結凝灰岩のアパタイト微量元素組成は,北川凝灰岩を構成する4つの凝灰岩(池月,下山里,荷坂,柳沢凝灰岩)のいずれの組成とも明らかに異なることが分かった.この結果は,前述した本地域の溶結凝灰岩と池月凝灰岩の放射年代が一致しない結果と調和的であり,今後荒砥沢地域の溶結凝灰岩については,対比や給源に関して再検討が必要である.

引用文献  
 (社)地盤工学会 2008年岩手・宮城内陸地震災害調査委員会,2010,平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震 災害調査報告書  
 北村 信(編)(Kitamura, N.),1986,新生代東北本州弧地質資料集第2巻,島弧横断ルート No.20(鬼首-細倉-花泉)(The Cenozoic Arc Terrace of Northeast Honshu, Japan, Vol.2, No.20, (Onikobe-Hosokura-Hanaizumi)),その8,8p.  
 大場 司・林 信太郎(Ohba, T. and Hayashi, S.),2008,宮城県栗原市荒砥沢ダム巨大地すべりの地質背景(Geologic Background of the Huge Landslide at Aratozawa, Kurihara, Miyagi Prefecture),秋田大学工学資源学部研究報告(Akita University),第29号  
 土谷信之・伊藤順一・関 陽児・巖谷敏光(Tsutiya, N., Itoh, J., Seki, Y. and Iwaya, T.),1997,岩ヶ崎地域の地質(Geology of Iwagasaki distinct),地域地質研究報告,5 万分の1地質図幅 (1:50,000),岩ヶ崎,秋田(6)第68号,地質調査所(Geol. Surv. Japan)