一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

認定医審査ポスター

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2018年6月22日(金) 09:50 〜 16:50 ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-09] 早期の咬合回復による摂食の改善をNSTによるアセスメントで評価した症例

○栗原 茂1 (1. 医療法人社団有信会呉記念病院歯科)

【目的】
 本院ではNSTのアセスメントに口腔状態,摂食機能,栄養状態などの項目を包括的に評価する「KTバランスチャート(KTチャート)」を用いている。今回,歯科介入により口腔環境が改善し,リハビリテーションも良好な経過をみた症例について報告する。
【症例および処置】
 患者は85歳女性,左視床部出血の後遺症のリハビリテーション目的にて当院回復期病棟に入院した。後遺症として右片麻痺,失語症を認めたが,嚥下機能に問題はなかった。既往歴として軽度認知症を認めた。主訴は歯が動揺して食べ難いとの訴えであった。初診時の口腔内は慢性辺縁性歯周炎,不良補綴物を多数認め,咬合崩壊を来していた。初診時のKTチャートは口腔状態:1,捕食・咀嚼・送り込み:4,活動:3,摂食状況レベル:4,食物形態:4,栄養状態:3であった。FIMは45であった。治療は主訴である動揺歯の固定をまず行い,ブラッシング指導の後,早期に咬合を確保する目的で上下部分床義歯を新製した。その後,順次不良補綴物の除去と残存歯の処置を行い,適宜義歯の追補,修理を行った。
【結果と考察】
 主訴が改善された時点で患者の満足が得られ,食思が回復し,やる気につながった。退院前のKTチャートは口腔状態:5,捕食・咀嚼・送り込み:5,活動:4,摂食状況レベル:5,食物形態:5であり,多くの項目で改善した。FIMは59であった。体重は身体活動性が改善したためか,初診時の48.3kgから退院前には47.1kgと減少を示したが,血清アルブミン値は初診時3.2g/dlから退院前3.3g/dlと若干改善した。義歯を作製し,食べられる口腔環境を作れた事がリハビリテーションの良好な経過につながったと考えられる。