一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

認定医審査ポスター

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2018年6月22日(金) 09:50 〜 16:50 ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-23] 脳血管疾患後の意識レベルの低い嚥下障害患者に対し頻回の介入が奏功した1例

○鈴木 重紀1 (1. 昭和大学スペシャルニーズ口腔医学講座口腔リハビリテーション医学部門)

【目的】
 嚥下障害患者の直接訓練開始基準の一つに,意識レベルがJapan Coma Scale(JCS)で1桁程度であることが推奨されてきた。意識障害があれば嚥下障害が合併することは周知の事実であるが,頻回の介入により嚥下障害が改善した1例を今回経験したので報告する。
【症例および処置】
 82歳,女性。既往歴:高血圧症,糖尿病,脳梗塞。2016年2月に左大脳皮質下出血にて開頭手術。同年4月に胃瘻造設。退院後老人施設に入所し、同年10月訪問歯科初診。初診時所見:右片麻痺で要介護5・FIM18点,JCSⅡ-10から20,全失語,意思表示・従命不確実であったが、声かけをしながら左傾斜顎引き姿勢で嚥下調整食1jの経口摂取可能であった(藤島の摂食嚥下能力のグレード:Gr.4,摂食状況のレベル:Lv.1)。楽しみレベルの経口摂取を目標とし,定期的介入を開始した。
【結果と考察】
 毎週介入し、3カ月後には覚醒状態は不安定ながら嚥下調整食4で経口摂取可能となった。しかし,患側口腔前庭に食物残留,舌による送り込みの遅延,嚥下後軽度のむせを認め、トロミ水での交互嚥下を追加指導した(Gr.4, Lv.4)。介入11カ月後には胃管栄養は継続しているものの、食事形態はほぼ常食となりJCSもほぼ1桁と安定してきた。車椅子に移乗して姿勢を維持できるようになり,食事時間も短縮した(Gr.5, Lv.5)。この間発熱は認められなかった。脳血管疾患後では自然回復と介入効果の線引きは困難ではあるが、今回、介入11カ月後に胃管栄養併用であるものの常食摂取可能となったのは,頻回の介入と施設職員の協力および段階的に目標を設定したことが奏功したものと考えられた。