The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題ポスター

症例・施設

症例・施設

Sat. Jun 23, 2018 9:30 AM - 3:30 PM ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-103] 歯科治療を拒む認知症患者の1例

○稲富 みぎわ1、秋山 悠一1、氷室 秀高2 (1. 医療法人社団秀和会水巻歯科診療所、2. 医療法人社団秀和会小倉南歯科医院)

【緒言】
 ミールラウンドは,栄養管理の一環として経口摂取を維持する目的で問題点の抽出のために行われている。しかし認知症のため歯科介入が著しく困難な場合を多く経験する。
 今回私達はミールラウンドで歯科介入を示指されたが,介入開始が困難だった一例で良好な結果を得たので,その方法の内容と経過について報告する。
【症例】
 某老人保健施設入所中89歳女性。認知症による意欲低下。義歯は紛失。初診時,「困っていない」を連呼し歯科治療を全く受け入れない。
【院内カンファレンス】
 歯科治療への導入困難への対策として,いわゆる馴染みの関係を築く,そして関連職種の協力を得るために口腔機能低下を客観的方法で共有することを方針とした。また義歯により機能向上の可能性が高いことが予想された。
【経過】
 1.馴染みの関係を構築する
 まず歯ブラシによるリラクゼーション法を週1回1ヵ月間継続。会話に応じてくれるようになり,「食べることくらいしか楽しみはない」などの情報が得られるようになった。入れ歯を入れてもっと食べられるように頑張りましょうと提案した。数回の提案の後,歯科治療への導入ができた。
 2.口腔機能低下を客観的評価方法で他職種と共有する
 機能評価は,歯科衛生士が担当し経過を看護師・介護士と共有した。
 3.口腔の形態的改善
 義歯は通法に従い作製。受け入れは良好。喫食量は,術前の全介助,刻み食6割から自立,普通食8割に増加した。
【考察】
 頑固で歯科診療を受け入れないことが本例の最大の問題であった。患者さんを囲む全ての人に治療の必要性と有用性を理解してもらうことで治療に導入が可能となった。今後,認知症の方をもっとよく理解して今回のような症例を重ねたいと思っている。