The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題ポスター

症例・施設

症例・施設

Sat. Jun 23, 2018 9:30 AM - 3:30 PM ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-115] 緩和ケア病棟への入院希望の高齢舌癌患者に対してMSWが自己決定を支援した一例

○吉野 夕香1,2、末永 智美3,4、金本 路5、植木 沢美6、川上 智史7、會田 英紀8、平井 敏博9 (1. 北海道医療大学病院地域連携室、2. 北海道医療大学大学院歯学研究科保健衛生分野、3. 北海道医療大学病院歯科衛生部、4. 北海道医療大学大学院歯学研究科高齢者・有病者歯科学分野、5. 北海道医療大学病院歯科部、6. 北海道医療大学歯学部附属歯科衛生士専門学校、7. 北海道医療大学歯学部高度先進保存学分野、8. 北海道医療大学歯学部高齢者・有病者歯科学分野、9. 北海道医療大学)

【目的】
 終末期患者の療養選択は多様化し,担当する医療従事者にとっては機能分化された医療機関や在宅サービス関係者との連携が不可欠となる。ここには支援や連携に携わる医療ソーシャルワーカー(以下MSW)が関与するが,医科に比しての歯科での役割はさほど大きくはないように思われる。今回,当院歯科の癌患者がMSWの支援によって希望にそった療養の自己決定を行った一例を報告する。
【事例と対応】
 70歳代女性。主訴:左側舌縁部疼痛。診断:舌癌(T3N2bM0,StageⅣA)。昨年7月,インフォームドコンセントにおいて標準治療としての手術を説明するも,患者の就労継続希望を優先し,根治療法ではないことを認識の上,進行抑制のための抗癌剤治療を開始した。同年11月末,疼痛増強のため入院,同時に離職した。入院後に症状は軽減し,終末期であることから,MSWを含めての種々の検討が開始された。当初,患者と家族は緩和ケア病棟への入院を強く希望する一方,MSWとの面談に際して,キーパーソンである娘からは否定的,攻撃的な発言がみられた。当院と先方のMSWによる説明や施設見学等にも拘わらず,療養先の自己決定に難渋し,結果的に転院は叶わなかった。患者は疼痛緩和のみを望んでいることが判明,疼痛コントロールが可能で信頼関係をすでに構築した当院口腔外科での治療継続との自己決定を下し,その後本年1月に逝去された。
【考察】
 MSWの支援過程で,療養の自己決定がなされた。死亡直後に患者の娘から,当院での療養が本人と家族にとって非常に充実していた旨を知らされた。本事例の如く,歯科においてもMSWによる他機関との連携や自己決定への支援は有用であり,さらなる体制の強化が望まれる。