The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題ポスター

口腔機能

口腔機能

Sat. Jun 23, 2018 9:30 AM - 3:30 PM ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-023] 固形物咀嚼・嚥下時の高齢総義歯装着者の食物搬送動態

○原 淳1、古屋 純一1,2、玉田 泰嗣1、山本 尚徳1、松木 康一1、小野寺 彰平1、米澤 紗織1、佐藤 友秀1、城 茂治1、近藤 尚知1 (1. 岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座、2. 東京医科歯科大学院地域・福祉口腔機能管理学分野)

【目的】
 高齢者では咀嚼機能低下が生じやすく、食塊形成の不良や食物搬送能力の低下によって、咽頭残留や誤嚥等のリスクが高まる可能性がある。しかし,高齢者に多い有床義歯装着者の咀嚼嚥下時の食物搬送動態については不明な部分も多い。そこで本研究では高齢総義歯装着者を対象に、咀嚼から嚥下に至る食物搬送動態を検討した。
【対象および方法】
 本研究は岩手医科大学歯学部倫理委員会の承認(No.01150)を得て,ボランティアとして高齢総義歯装着者20名(平均年齢:76.8歳),若年有歯顎者30名(平均年齢:27.8歳)が自らの意思により参加した。被験食品はバリウム含有寒天ブロック(20×20×20mm,約11g)を用い,摂食時の食物搬送動態を嚥下造影により記録した。得られた動画から,口腔・咽頭領域を口腔領域,口腔咽頭上部領域,喉頭蓋谷領域,下咽頭領域の4つに区分し,食塊先端の通過時間,総摂食時間,嚥下反射惹起時の各領域における食塊量,舌による咽頭から口腔への食塊の押し戻し運動(Push forward運動)を分析した。
【結果と考察】
 若年有歯顎群と比較して高齢総義歯群では,総摂食時間の延長,口腔通過時間の短縮,咽頭通過時間の延長が認められたが,下咽頭通過時間は有意な差を認めなかった。嚥下反射惹起時の食塊量は,喉頭蓋谷領域において高齢総義歯群で有意な増加を認めた。Push forward運動には有意な差を認めなかった。以上より,高齢総義歯装着者では,口腔内での食塊形成・保持能力が低下するが,舌による口腔への押し戻しは行われず,若年有歯顎群と比べて十分に咀嚼されない状態で,喉頭蓋谷領域により早く侵入する可能性が示唆された。