一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

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一般演題ポスター

症例・施設

症例・施設

2018年6月23日(土) 09:30 〜 15:30 ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-098] 頬骨インプラントを応用した上顎広範囲顎補綴治療の高齢期までの10年予後

○下平 修1、佐藤 裕二1、大澤 淡紅子1、磯部 明夫1、今村 嘉希1、武田 佳奈1、西岡 千尋1 (1. 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座)

【目的】
 近年,歯科用インプラントの顎顔面補綴領域への応用が増加しているが,広範囲な上顎骨欠損に対しては頬骨インプラントを適用することで,高い顎口腔機能回復が成し遂げられ,患者のQOL向上に寄与できると思われる。今回,広範囲な上顎骨欠損に対して,頬骨インプラントを適用した顎補綴治療の10年予後を報告する。
【症例および処置】
 患者は初診時46歳の男性。上顎前歯部歯肉の腫脹と疼痛を主訴として,1994年8月に昭和大学歯科病院第一口腔外科を受診した。扁平上皮癌の診断のもと,左側全頸部郭清術,右側肩甲舌骨筋上頸部郭清術および両側上顎部分切除術を施行した。69歳となった現在までに腫瘍の再発,転移は認められていない。
 広範囲な骨欠損のため口腔外科,インプラント科と治療方針について検討したが,頬骨インプラント治療以外では患者のQOLを向上させることが不可能であると診断した。最終的な補綴計画は欠損部容積が大きいこと,埋入部位,方向に著しい制約があるためインプラントへの荷重および義歯の支持,維持には力学的に不利な植立であることを考慮し,磁性アタッチメントのキーパーを組み込んだ自家製ミリングバーアタッチメントを上部構造体として,これを支台装置とする可撤式顎補綴装置を設計した。
【結果と考察】
 2007年10月の可撤式顎補綴装置装着(59歳時)では,咀嚼時も含め義歯の動揺がなく,構音機能検査でも良好な結果であった。管理面においてもバーアタッチメントにより清掃が容易になったとのことであった。高齢期になった2018年1月のリコールでも,充分な機能回復の保全が確認され,広範囲な上顎骨欠損に対する頬骨インプラントの有用性が実証されたと考えられる。