The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

認定医審査ポスター

認定医審査ポスター

Thu. Jun 21, 2018 12:30 PM - 4:00 PM ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-01] 義歯により食形態とQOLの向上を図った咬合崩壊を有する高齢者の一症例

○織田 展輔1 (1. 織田歯科医院)

【緒言】
 高齢者において食事はQOLの重要な部分を占めている。今回,咬合崩壊によって生じた食形態の低下を移行義歯にて改善した後に,更なる咀嚼機能と審美性の改善を図り最終義歯を装着することで,QOLを向上させた症例を報告する。
【症例および処置】
 85歳の女性。上顎残存歯が動揺し,食事ができないことを主訴に来院した。上顎は10本残存だったが多くに歯周病や根面う蝕を認めた。下顎は無歯顎で義歯を使用していなかった。生活環境は独居で,主食は全粥,副食はソフト食レベルを摂取していた。全身疾患は脳梗塞の既往があり,高血圧,高コレステロール血症,骨粗鬆症と診断されている。
 全身状態の評価の上,抜歯に支障はないと判断し,4本を抜歯後に移行義歯を製作した。約1ヵ月で上下顎に義歯を装着し,段階的摂食訓練により普通食摂取可能となった。しかし,前歯部のフレアーアウトと臼歯の咬合平面不正により審美障害と咀嚼障害を訴えていた。そこで,抜歯と抜髄後に義歯を修理しオーバーデンチャーとした上で,磁性アタッチメントを用いた全部床義歯を新製した。移行義歯では摂取しにくかった食品も容易に摂取できるようになり,現在も経過を観察している。
【結果と考察】
 本症例では,崩壊した咬合関係を義歯によって段階的に回復し,摂食訓練を併用することで早い段階で普通食を摂取可能となり,咬合支持の確立がQOLの改善に寄与したと考えられた。さらにより積極的な治療を行い,偏心運動時の咬合接触関係を適切に付与し磁力によって維持力を向上させることで,食品摂取の多様性を向上させることができ,患者のQOLをさらに改善することができたと考えられた。