一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

認定医審査ポスター

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2018年6月21日(木) 12:30 〜 16:00 ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-06] 老老介護により通院制限が生じた口腔インプラントを有する後期高齢者に歯科介入を行った1症例

○黒崎 陽子1 (1. 岡山大学病院クラウンブリッジ補綴科)

【目的】
口腔インプラント(以下IP)を有する高齢者が近年増加しているが,全身機能の低下や配偶者の介護の問題から通院困難となる場合がある。今回,老老介護により通院制限が生じたIPを有する後期高齢者に歯科介入を行ったので報告する。
【症例および処置】
 患者は過去に12-23部にIP治療(埋入部12,21,22,23)を受けた83歳の女性で,定期的なメインテナンスを行なっていた。2014年2月に13, 同年11月に24が歯根破折により抜歯適応となり,IP部の両隣在歯への補綴治療が必要となった。患者はアルツハイマー型認知症の夫と2人暮らしであったが,同時期に夫の認知状態が悪化し,その介護のため受診間隔が伸び,受診時間に制限が生じるようになった。そのため,通院しやすい近医への転院を勧めたが,患者は当院での治療を希望した。受診間隔や時間の制限と患者の年齢を考慮し,IPの追加埋入を要せず,今後訪れる可能性のある介護現場でも管理が容易とされる13-24部への可撤式のインプラントオーバーデンチャーの作製を提案したが,患者は固定式を強く希望した。そこで,既存のIPを活用し,追加埋入を必要としない13,24部にカンチレバーを用いた固定式の上部構造を作製することで同意を得た。2017年2月に上部構造を装着し,現時点では機能的に問題なく患者は非常に満足している。今後は生活環境や健康ステージに合わせたIP管理や可撤式補綴装置への変更も考慮する必要があると考える。
【まとめ】
 老老介護により通院制限が生じたIPを有する後期高齢者に,IPの追加埋入を行うことなく上部構造の設計を変更することで,機能歯数を維持し,咬合支持を確保することができた。