一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2018年6月21日(木) 12:30 〜 16:00 ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-11] 人工栄養を拒絶して退院し経口摂取による4年間の在宅療養と看取りをサポートしたパーキンソン病患者

○猪原 光1 (1. 医療法人社団 敬崇会 猪原歯科・リハビリテーション科)

【目的】
 高齢者は入院を機として精神状態が悪化し,経口摂取困難になることがしばしば認められる。特に神経難病であるパーキンソン病(PD)患者の場合,病状の進行に伴いオンオフ現象が現れ,より困難となる。本症例では高齢PD患者に歯科が介入し最期まで経口摂取を支援した経過を報告する。
【症例および処置】
 初診時94歳女性。PDならびにアルツハイマー型認知症のため在宅療養中であったが,誤嚥性肺炎発症のため入院した。PD重症度はホール・ヤールⅤ度と,全介助の状態であった。病院主治医より病棟での嚥下内視鏡検査(VE)が依頼されたため実施した。覚醒状態が低下しており,嚥下運動が全く惹起されない状態であったが,ご家族は本人の意向として一切の人工栄養を拒絶された。誤嚥性肺炎が改善したため,退院時カンファレンスを経て在宅復帰することとなり,歯科として経口摂取支援を行うこととなった。退院直後は,週2回の言語聴覚士による短期集中リハビリを実施し,覚醒状態と経口摂取量の維持を図った。また歯科医師によるVEや義歯修理を実施し,歯科衛生士の訪問口腔ケア,管理栄養士による栄養指導も併せて実施した。
【結果と考察】
 退院時カンファの際,在宅医よりこのままでは予後3ヵ月である旨の宣告がなされたが,経口摂取支援を行った結果,徐々に経口摂取量が増加し,義歯修理後には,刻み食レベルの摂取(1,000kcal/日)が可能となった。介入開始から4年後,98歳でご自宅にて逝去されたが,最期まで歯科として在宅療養のサポートを継続した。その間,入院は下痢による1週間のみであった。入院中から在宅,看取りに至るまで一貫した支援を実施し,患者のQOLに大きく貢献できたと考える。