一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2018年6月21日(木) 12:30 〜 16:00 ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-14] 長期における訪問診療にて口腔機能の維持を図った一症例

○飯田 崇1 (1. 日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座)

【目的】
 要介護高齢者に対する訪問診療ではQOLの維持,向上が目標となる。今回,要介護高齢者の患者に対して訪問診療を10年以上継続したことで良好にQOLを維持している症例を報告する。
【症例および処置】
 患者は初診時68歳の女性。1998年に慢性関節リウマチを発症後,身体機能が低下し歩行不可能となった。2006年に咀嚼困難を主訴に訪問診療を依頼された。初診時は16歯が残存しておりアイヒナーの分類はB4であった。診療可能な姿勢はベッドでの仰臥位のみであった。全顎のスケーリングより開始し,歯科治療への順応を優先した。次に上下顎部分床義歯を装着して臼歯部の咬合支持を確立した後,上下顎前歯部の歯冠補綴装置を作製した。その後1ヵ月ごとに口腔ケアにて経過観察を行ったところ2009年に上顎前歯部歯冠補綴装置が脱離した。支台歯は保存不可能であったため抜歯し,上下顎部分床義歯を再作製した。さらに,上下顎部分床義歯を再装着した後に生じた臼歯部の歯冠補綴装置脱離に対しては残根削合および部分床義歯の増歯を行った。2012年には5歯が残存しており,アイヒナーの分類はC2であり,診療は座位での対応も可能となった。この時点で義歯の再作製を希望したことから,上顎総義歯,下顎部分床義歯を作製した。
【結果と考察】
 最終義歯装着後は1ヵ月ごとに口腔ケアを行い経過観察を行った。最終義歯装着後6年を経過し,咬合関係,義歯の適合状態,残存歯の歯周組織の状態は良好である。本症例では結果として経時的に残存歯数は減少したが,長期にわたる訪問診療により口腔内環境,口腔機能の維持が可能であることを示しており,定期的な訪問診療の継続がQOLの維持に貢献する可能性を示唆した。