一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

認定医審査ポスター

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2018年6月21日(木) 12:30 〜 16:00 ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-30] 非ビタミンK阻害経口抗凝固薬の変更を必要とした超高齢者の抜歯の1例

○林 宰央1 (1. 東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

【緒言】
 近年,非弁膜症性心房細動の抗凝固療法に非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(DOAC)が使用され,個々に応じた適正使用が求められている。今回,術前に凝固能の著しい低下を認めDOACの変更をした超高齢者の抜歯の1例を経験したので報告する。
【症例】
 95歳の女性。補綴前処置抜歯で来院した。既往は心房細動(CHA2DS2-VAScスコア6点),脳梗塞,高血圧症,てんかん。Ca拮抗薬,降圧利尿薬,抗てんかん薬およびDOACを服用していた。初診時,四肢に皮下出血斑を認め,歯肉は易出血性で容易には止血されなかった。血液検査ではHb10.4g/dl,血清クレアチニン1.01mg/dl,GFR38.4ml/min/1.73m2,PT42秒,PT-INR3.9で,HAS-BLEDスコア5点あった。初診時,DOACはイグザレルト15mg/dayであった。
【処置および経過】
 腎機能低下に伴うイグザレルト血中濃度の高値による凝固能の著しい低下が認められたため,脳外科主治医に対診し10mg/dayに減量された。減量後もPT41.4秒,PT-INR3.9と著変認められなかったため,腎排泄の依存性が低いアピサバン5mg/dayに変更された。変更後,PT23.2秒,PT-INR1.9と改善を認めたため局所麻酔下に抜歯術を施行し,抜歯窩に局所止血材を入れ縫合した。術中異常出血はなく,術後出血も認めなかった。1週後に抜糸を行ったが抜糸後の出血も認められなかった。四肢の皮下出血斑も認められていない。
【考察】
 DOACはモニタリングが確立されておらずまたモニタリングが不要とされているが,術前の腎機能,PTやPT-INRにて至適量の確認が必要であると考えられた。