[摂食P-01] 咽頭悪性腫瘍が原因で球麻痺様症状を呈した症例
【症例】
76歳女性。2015年2月中旬に右側舌悪性腫瘍の診断の下,当院口腔外科にて右側舌部分切除,右側上頸部郭清術,前腕皮弁再建術を行った。術後は全粥ミキサー食を食べていたが,同年9月初旬から飲み込みにくさを自覚し,9月下旬に誤嚥性肺炎と診断され入院となった。10月初旬に退院し,同月中旬に嚥下診察を希望し当部を受診した。
【診断および経過】
嚥下内視鏡検査(VE)にて解剖学的な異常は認めなかったものの,唾液の咽頭貯留を多量に認め,ゼリーは複数回嚥下するものの多量に咽頭残留し,一部誤嚥を認めた。嚥下造影検査では右側食道入口部の開大不全による通過障害を認め,球麻痺様症状を呈していた。以上の所見から,経口摂取は危険と判断し経鼻経管栄養での管理となった。嚥下機能からは延髄梗塞も疑われたが口腔外科での精査の結果,右側咽頭部粘膜下に悪性腫瘍の再発を認め,球麻痺様症状の原因は腫瘍による食道入口部の圧迫であることが明らかとなった。腫瘍が内頸動脈付近まで増大しており手術による切除は困難と判断され,本人が最期まで食べたいと希望したため口腔外科にて化学療法を,当部にて右側回旋嚥下での直接訓練を開始した。化学療法開始から3週間後の再評価の結果,CTにて腫瘍の縮小を認めた。VEでは,正面で嚥下しても誤嚥はなく通過障害の改善を認めたため頸部回旋の指示を解除した。5週間後には全量経口摂取が可能となり経鼻栄養チューブを抜去した。
【結果と考察】
本症例の球麻痺様症状は,延髄梗塞ではなく咽頭腫瘍による食道入口部の圧迫という局所的な原因から生じていた。口腔腫瘍術後は再発や転移の可能性を常に考慮しながら嚥下機能の原因を明らかにする必要があると考えられた。
76歳女性。2015年2月中旬に右側舌悪性腫瘍の診断の下,当院口腔外科にて右側舌部分切除,右側上頸部郭清術,前腕皮弁再建術を行った。術後は全粥ミキサー食を食べていたが,同年9月初旬から飲み込みにくさを自覚し,9月下旬に誤嚥性肺炎と診断され入院となった。10月初旬に退院し,同月中旬に嚥下診察を希望し当部を受診した。
【診断および経過】
嚥下内視鏡検査(VE)にて解剖学的な異常は認めなかったものの,唾液の咽頭貯留を多量に認め,ゼリーは複数回嚥下するものの多量に咽頭残留し,一部誤嚥を認めた。嚥下造影検査では右側食道入口部の開大不全による通過障害を認め,球麻痺様症状を呈していた。以上の所見から,経口摂取は危険と判断し経鼻経管栄養での管理となった。嚥下機能からは延髄梗塞も疑われたが口腔外科での精査の結果,右側咽頭部粘膜下に悪性腫瘍の再発を認め,球麻痺様症状の原因は腫瘍による食道入口部の圧迫であることが明らかとなった。腫瘍が内頸動脈付近まで増大しており手術による切除は困難と判断され,本人が最期まで食べたいと希望したため口腔外科にて化学療法を,当部にて右側回旋嚥下での直接訓練を開始した。化学療法開始から3週間後の再評価の結果,CTにて腫瘍の縮小を認めた。VEでは,正面で嚥下しても誤嚥はなく通過障害の改善を認めたため頸部回旋の指示を解除した。5週間後には全量経口摂取が可能となり経鼻栄養チューブを抜去した。
【結果と考察】
本症例の球麻痺様症状は,延髄梗塞ではなく咽頭腫瘍による食道入口部の圧迫という局所的な原因から生じていた。口腔腫瘍術後は再発や転移の可能性を常に考慮しながら嚥下機能の原因を明らかにする必要があると考えられた。