一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

2018年6月22日(金) 10:00 〜 16:30 ポスター会場(5F講習室4) (5F 講習室4)

[摂食P-17] 訪問診療による摂食嚥下リハビリテーションにより経口摂取が可能となった1症例

○玉田 泰嗣1 (1. 岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座)

【目的】
 脳血管障害によって生じた重度の摂食嚥下障害をもつ高齢者に対して,間接訓練と口腔ケアを含めたリハビリテーションを行うことで良好な結果が得られたので報告する。
【症例および処置】
 患者は89歳の男性で,脳血管障害のため入院しており,経口摂取困難を主訴に,訪問診療を希望して受診した。初診時の栄養摂取法は経管栄養のみで,JCS:Ⅰ-2,ADL:C1であり,湿性嗄声を認めた。口腔内には多量の湿性痰を認め,上下顎無歯顎であったが,義歯は所持していなかった。スクリーニングテストの結果は,RSST:0回,MWST:1,FT:1であった。嚥下内視鏡検査では,咽頭部に多量の湿性痰を認め,痰のために喉頭蓋の翻転ができない状態であった。摂食嚥下障害臨床的重症度分類は食物誤嚥レベルと考えられた。
【結果と考察】
 口腔内および咽頭部の湿性痰除去後の嚥下内視鏡による精査では,不顕性誤嚥,嚥下反射惹起不全,喉頭蓋谷および梨状窩に食塊残留を認めた。医科主治医と相談の上,伸展マッサージ,冷圧刺激法,嚥下反射促通手技,息こらえ嚥下による間接訓練,口腔ケアおよび義歯の製作を開始した。嚥下内視鏡検査下で,代償法(頸部回旋・複数回嚥下)を用いてのゼリー嚥下が可能となった後に,直接訓練を開始した。その後,段階的摂食訓練へと移行し,ペースト食に食形態を上げた。介入から3週後に新義歯を装着し,介入から6週後に一口大食を摂取可能となった。適切な評価のもとで多職種と連携しリハビリテーションを行うことで,経口摂取可能となり,患者のQOLを回復することができたと考えられた。その後も定期的な摂食嚥下機能の評価を行い,良好に経過している。