[O1-3] 食道刺激を利用した,ヒト嚥下運動を誘発する新たな手法の開発
―健常成人での検討―
【背景と目的】
摂食嚥下障害の臨床において,重度嚥下障害を持つ患者であっても,誤嚥を回避し効果的に嚥下運動を誘発させる訓練法が期待されている。我々は,この問題の解決として,食道刺激によって誘発される嚥下運動:Stimulation of the esophagus activates the pharyngeal swallow response (EPSR)に注目してきた。本研究の目的は, EPSRを最も効率よく誘発することにある。
【方法】
健常成人10名(男性4名,29.5±2.0歳)を対象とした。鼻腔より高解像度マノメトリーを搭載したカテーテルを挿入し,反対の鼻腔より吸引用カテーテルを挿入し,先端は上部食道括約筋の下方5cmの位置に留置した。次に,床から90度, 60度, 30度いずれかに角度を付け,1℃,25℃,35℃にコントロールされたとろみ水をそれぞれ2回ずつ注入した。注入からUES弛緩開始までの時間を潜時として算出し,潜時が,温度,体幹角度で相違があるか多変量解析を用いて検討した。
【結果と考察】
1℃では全例でEPSRが誘発されたが,25℃,35℃では誘発されない例がみられた(嚥下誘発率:100%,92%,76%)。潜時は液体温度により異なっており,体幹角度によらず35℃,25℃,1℃の順に短縮した(p<0.01)。さらに,1℃では90度と比較して60度, 30度の潜時が短縮した(p<0.01)。
【考察】
本研究より,60度, 30度のいずれかで,1℃の冷水を上部食道に注入した際に,EPSRが最も誘発されやすいことが示唆された。嚥下障害患者でもEPSRが誘発されれば,革新的な訓練法として使用できる可能性がある。
摂食嚥下障害の臨床において,重度嚥下障害を持つ患者であっても,誤嚥を回避し効果的に嚥下運動を誘発させる訓練法が期待されている。我々は,この問題の解決として,食道刺激によって誘発される嚥下運動:Stimulation of the esophagus activates the pharyngeal swallow response (EPSR)に注目してきた。本研究の目的は, EPSRを最も効率よく誘発することにある。
【方法】
健常成人10名(男性4名,29.5±2.0歳)を対象とした。鼻腔より高解像度マノメトリーを搭載したカテーテルを挿入し,反対の鼻腔より吸引用カテーテルを挿入し,先端は上部食道括約筋の下方5cmの位置に留置した。次に,床から90度, 60度, 30度いずれかに角度を付け,1℃,25℃,35℃にコントロールされたとろみ水をそれぞれ2回ずつ注入した。注入からUES弛緩開始までの時間を潜時として算出し,潜時が,温度,体幹角度で相違があるか多変量解析を用いて検討した。
【結果と考察】
1℃では全例でEPSRが誘発されたが,25℃,35℃では誘発されない例がみられた(嚥下誘発率:100%,92%,76%)。潜時は液体温度により異なっており,体幹角度によらず35℃,25℃,1℃の順に短縮した(p<0.01)。さらに,1℃では90度と比較して60度, 30度の潜時が短縮した(p<0.01)。
【考察】
本研究より,60度, 30度のいずれかで,1℃の冷水を上部食道に注入した際に,EPSRが最も誘発されやすいことが示唆された。嚥下障害患者でもEPSRが誘発されれば,革新的な訓練法として使用できる可能性がある。