The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題口演

加齢変化・基礎研究

加齢変化・基礎研究

Fri. Jun 22, 2018 10:10 AM - 10:40 AM 第3会場 (6F 大会議室)

座長:竹島 浩(明海大学歯学部病態診断治療学講座高齢者歯科学分野)

[O1-6] 咀嚼がもたらす摂食嚥下機能への影響

○井上 誠1,2、辻村 恭憲1、真柄 仁2 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. 新潟大学医歯学総合病院摂食嚥下機能回復部)

【背景と目的】
 本研究では,咀嚼を意識した際に摂食嚥下運動がどのように変化するかを明らかにすること,食塊形成過程において,食物物性が嚥下誘発にどのような影響を与えるかを評価することを目的とした実験を行った。
【方法】
 実験1では,21名の健常若年者を対象として,米飯8gを普段通りに食べるという自由摂取(free),自由咀嚼時と同じ咀嚼回数後に嚥下する回数制限摂取(N-limited),自由摂取時と同じ時間後に嚥下を指示する時間制限摂取(T-limited)時の舌骨上筋群筋電図および内視鏡記録を行い,摂食動態をタスク間で比較した。
 実験2では,29名の健常若年者および14名の健常高齢者を対象に,free時の咀嚼時間の50,100,150%の時間を設定して咀嚼を行わせ,その直後に吐き出す,または嚥下するのいずれかを行わせて各条件間の物性比較を行った。
【結果と考察】
 実験1:N-limitedやT-limitedなどの制限咀嚼は,咀嚼中の食塊の咽頭への移送を制限(咀嚼中の咽頭移送が認められた者;free10 名,N-limited3名,T-limited5名)して,嚥下時間を有意に増加させた(嚥下咽頭期時間;free 0.59 ± 0.07秒,N-limited 0.62 ± 0.08秒,T-limited0.63 ± 0.08秒)。
 実験2:嚥下時物性評価より,食品物性は個人の能力によらず咀嚼時間に依存すること,絶対的な嚥下閾値は存在しないことが明らかとなった。また,若年者と高齢者の間に差は認められなかった。咀嚼過程やそれによって導かれる嚥下運動の評価を行うことが摂食嚥下障害の臨床においても重要であることが示唆された。