The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題口演

連携医療・地域医療

連携医療・地域医療

Fri. Jun 22, 2018 2:10 PM - 2:40 PM 第2会場 (1F 小ホール)

座長:大野 友久(国立長寿医療研究センター 歯科口腔先進医療開発センター 歯科口腔先端診療開発部 在宅・口腔ケア開発室)

[O1-13] 重度認知症の高齢患者に院内外で医療連携を行った結果手術が成功し経過も確認できた1例

○横溝 一郎1,2、中久木  康一2、吉川 博康3 (1. 有隣病院歯科口腔外科、2. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面外科学分野、3. 吉川歯科医院)

【目的】
 基礎疾患が複雑で,認知症による拒否体動が強い高齢患者に歯科治療を行うことは難しい。このような症例で頬粘膜の腫瘍が増大したため手術を行った際,内科医師が睡眠導入剤を用いて拒否体動を制御した結果成功し,訪問歯科医師の協力で経過も確認できた経験を得たため報告する。
【症例及び処置】
 80代後半女性。身寄りがなく行政介入の生活支援で特養入所中,訪問歯科医師が経過観察中の左頬粘膜腫瘍が増大を認め,当科へ相談で来院された。写真より,更に増大化すると経口摂取困難も予測し手術が必要と考えた。早速基礎疾患を訪問医師に問い合わせたが,詳細不明との返答から2日後当科紹介初診時に内科が評価を行い,入院管理下で鎮静に睡眠導入剤を用いれば手術可能と判断した。医療連携室が至急行政へ生活保護の医療扶助を依頼し,成年後見人と入所施設長にkey personの了解を得た。10日後入院,病室で睡眠導入剤筋注後静脈路を確保し外来で局所麻酔下に手術を行った。内科医師が睡眠導入剤の滴下速度を調整し抑制帯なしで拒否体動を治め腫瘍摘出,吸収糸で縫合後終了した。翌日退院後,訪問歯科医師より報告を受けて経過を確認した。
【結果と考察】
 診断が悪性で追加治療が必要となった場合当院では対応が難しいため,大学病院口腔外科より応援の歯科医師も手術に同席したが,病理組織検査では多形性腺腫であり,施設で経過観察を継続し再発なく3年後老衰で逝去された。
 本症例は当院滞在日数を初診日,入退院日の計3日と最小限に抑えた上,手術も成功し経過も確認できた。よってこのような症例には院内外で医療連携を行い対応することが,患者負担を少なく術後の生活の質を良好に維持するのに有効と考えられた。