The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題口演

口腔機能

口腔機能

Sat. Jun 23, 2018 9:50 AM - 10:20 AM 第3会場 (6F 大会議室)

座長:渡邊 裕(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所)

[O2-3] 早期口腔機能回復を目的とした術者主導の平均的両側性平衡が付与された歯列を複製して行う治療用義歯作製法

○長田 耕一郎1,2、山添 淳一2、湯川 綾美2、和田 尚久2 (1. 医療法人相生会金隈病院、2. 九州大学病院口腔総合診療科)

【目的】
 総義歯を必要とする高齢者は多く,なかには十分な咀嚼ができずに柔食や偏食となり栄養状態が悪化する者も存在する。重度フレイル期への進行を防ぐためには可及的早期に不適合義歯の修理調整が必要である。今回,われわれは,両側性平衡を付与した総義歯が安定した咀嚼機能を発揮するという報告を基に,迅速かつ適応性が高い治療用義歯の作製法を考案し,その有効性について検討したので報告する。
【方法】
 平均値咬合器を用いて,展開角が緩やかな人工歯の前後側方調節湾曲を緩やかに設定して左右対称に排列することで両側性平衡を付与した義歯を作製し,その上下歯列をコピーしたレジン歯列を準備した。そのレジン歯列を基礎床と筆積みで組み合わせて治療用義歯を作製し,患者に装着した。
【結果と考察】
 上記方法で作製した治療用義歯装着時は安定した咬頭嵌合位を示し,側方運動時に両側性平衡が確認できた。義歯安定に必要な要素の一つは両側性平衡の付与であることから,本治療用義歯作製においては,基礎床,咬合平面および上下顎間関係を重視し,排列と重合工程については省略することで早期に治療用義歯が完成することができた。患者本来の限界運動路の範囲内に術者が付与したレジン人工歯列のガイダンスが収まることが咬合器上の動きを口腔内で再現できる理由と考える。全身虚弱が認められる高齢者にとって口腔機能回復は早いほど有利である。今回検討した義歯作製法は,即時重合レジンを使用しているため研磨や硬度で材質に問題はあるが, 通常の義歯作製期間の約1ヵ月に比べて早期口腔機能回復の手法として有効であると考えられた。