一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題口演

口腔機能

口腔機能

2018年6月23日(土) 10:20 〜 10:50 第3会場 (6F 大会議室)

座長:服部 佳功(東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野)

[O2-4] 健常高齢者における舌圧と口腔周囲筋の関係

○原 豪志1、戸原 玄1、小林 健一郎2、山口 浩平1、吉見 佳那子1、中根 綾子1、水口 俊介1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学系専攻老化制御学講座高齢者歯科学分野、2. こばやし歯科クリニック)

【目的】
 舌筋の強さの指標である舌圧は,加齢や歯牙の欠損の影響を受けることが報告されている。一方で,咀嚼嚥下時に舌は,他の摂食嚥下関連筋と強調して動くため,舌圧はそれらの筋力とも関連があると考えられる。本研究では,健常高齢者において,舌圧と口腔周囲筋との関係性を調査したので報告する。
【方法】
 65歳以上の摂食嚥下障害の症状のない健常高齢者232名(男性80名,女性152名:平均年齢71.3±4.8歳)を対象とした。身体機能の指標として,握力,BMI (body mass index)を計測し,舌筋の運動機能について,舌圧とオーラルディアドコキネシスのうち,/ta/,/ka/の回数/秒を計測した。口腔周囲筋の筋力については,咬合力と開口力を測定した。さらに,咬合状態は,アイヒナー分類を用いて,class A,B,Cに分類した。統計処理は,舌圧を従属変数とした重回帰分析を行い,有意水準を0.05とした。
結果と考察
 多変量解析により性別と年齢を調整した結果,舌圧の説明変数として有意であった変数は,年齢(β=-0.222,p=0.001),/ta/(β=0.222,p=0.031),咬合力(β=0.148,p=0.047),アイヒナー分類(β=0.168,p=0.018),開口力(β= 0.231,p=0.001)であった. 歯牙の欠損により,舌圧は代償的に大きくなる一方で,舌圧と咬合力は,相互依存的に筋力低下する可能性が示唆された。さらに,舌圧産生時には,舌骨挙上が必要であるため,舌骨上筋の指標である開口力と舌圧が関係したと考えられた。