一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題口演

症例・施設/その他

症例・施設/その他

2018年6月23日(土) 14:50 〜 15:30 第3会場 (6F 大会議室)

座長:今村 嘉宣(昭和大学歯学部高齢者歯科学講座)

[O2-22] 地図状舌、溝状舌を伴う舌痛症に対して、漢方薬が奏功した1例

○新井 絵理1、三浦 和仁1、中澤 誠多朗1、松下 貴恵1、山崎 裕1 (1. 北海道大学大学院歯学研究院高齢者歯科学教室)

【症例および処置】
 70歳女性。主訴:舌のヒリヒリした痛み。初診:2017年11月。現病歴:3年前から舌のヒリヒリした痛みを時々,感じるようになった。2年後頃から痛みは徐々に増強し常に気になるようになった。そのため,近医の皮膚科,耳鼻科,内科,歯科を受診し,軟膏や各種漢方薬が投与されたが効果は認めなかった。かかりつけ医での各種検査でも異常なく,同科からの紹介にて当科受診した。現症:身長158cm,体重60kg(BMI:24)。食欲,睡眠に問題はなかった。口腔内所見では,地図状舌と溝状舌を認めるが同部に圧痛なく,痛みは安静時のみに出現し,摂食時には消失した。痛みの日内変動を認め午後から夕方に増強した。口腔乾燥,味覚異常は認めなかった。19本の現在歯数に異常なく,3箇所のブリッジや下顎部分床義歯の状態も問題なかった。前医での血液検査,カンジダ培養検査,鼻咽腔fiberで異常なく,痛みの性状から舌痛症と診断した。CMIは2領域であった。飲み込むときに詰まる感じがする症状があり,肩こり,腹部膨満感,下半身の冷えがあり,胸脇苦満がないことから,半夏厚朴湯(TJ16)を2包/日から開始した。服用3日目から効果を実感し2週後の再診時には舌痛のVASは55から25に減少した。そのため,半夏厚朴湯を2包から3包に増量し継続投与したところ,1月後にはVASは10まで減少し,咽頭部症状などの他の全身症状も軽快した。現在,継続服用中である。
【結語】
 本症例は,地図状舌と溝状舌が併発した舌痛症であったため,舌の特異的な外観による舌へのとらわれが強かったが,病的意義がないことを説示し,本人の全身症状にあった漢方薬を選択できたことで軽快した。