一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題ポスター

全身管理・全身疾患

全身管理・全身疾患

2018年6月22日(金) 09:50 〜 16:50 ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-078] 肺腺癌と転移性脳腫瘍を発症した高齢者に歯科治療を行った1症例

○京坂 侑加1、久保田 一政1、河合 陽介1、小原 万奈1、猪越 正直1、水口 俊介1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野)

【緒言】
 現在,高齢者の癌の罹患率と癌による死亡率は高く,また癌の加療が長期になることも頻繁に認められる。今回われわれは肺腺癌(骨・脳転移)に対して長期経過観察中の患者に歯科治療を行った症例を報告する。
【症例】
 症例:71歳男性。4年前に腰痛を自覚し近医受診,加齢性と診断を受けるも数日後に呂律不良が出現し,脳神経外科を受診した。入院精査の結果,肺腺癌(cT1aNOM1b)原発の転移性脳腫瘍と診断を受け,脳腫瘍に対してガンマナイフ治療(全照射量:0.87Gy)と,骨転移抑制のためにゾレドロン酸水和物と抗癌剤(ペメトレキセド)による治療を受けた。加療中に齲蝕による疼痛を主訴に当科受診し,口腔衛生維持を行っていたが,診断から4年後に疼痛症状の増悪があり,抜歯が施行された。現在まで感染や顎骨壊死などの副作用は見られず経過しており,原発・転移巣にも進行なくQOLは安定している。
【考察および結語】
 肺癌は骨転移する確率が比較的高く,骨修飾薬や放射線治療を施行することも多い。骨転移した場合平均7カ月が寿命であると報告があるが,本症例では5年に及んでいる。本症例では肺腺癌の脳転移巣に対してガンマナイフが,骨転移巣に対して骨修飾薬が,それぞれ使用された。両治療法ともに口腔乾燥,口腔内潰瘍,歯科治療による顎骨壊死を誘発することが知られ,摂食が困難になる可能性があるが,本症例では癌の担当医と連携をとりつつ長期歯科フォローを行ったことにより,適切な抜歯時期を見いだすことができた。歯科医師が変わりゆく癌治療と高齢者の全身状態・その変化を経年的に理解することが患者のQOL向上により一層繋がると考える。