[P一般-097] 退院要求と常食摂取に固執する前頭側頭型認知症患者に対し摂食嚥下訓練の効果と限界を示した1症例
【目的】
重度嚥下障害を有しながらも常食摂取に固執する前頭側頭型認知症患者に対し摂食嚥下訓練(以下,訓練)の効果と限界を示し,療養生活上の患者のQOL向上に繋がる可能性について検討した1症例を報告する。
【症例と経過】
71歳男性。主訴は「食べられるようになって家に帰りたい」であり,既往歴は電撃症,心房内血栓症,うつ病,誤嚥性肺炎であった。重度嚥下障害のため胃瘻を造設の後2014年4月に当院へ入院した。患者は常食摂取と退院に対する要求が強く,家族からの希望もあり嚥下評価を実施した。5月(初回)のVFにて咽頭期障害が顕著であり,経口摂取は楽しみ程度と判断したが,患者は「常食でないのなら」と食べること自体を拒んだ。さらに患者は「嚥下機能は改善した」と主張し再検査を熱望したため7月,11月に再検査を行った。その後患者が「楽しみ程度でも良いから食べたい」と気持ちを変えたため,同年12月から半年間,歯科衛生士と言語聴覚士が間接訓練を行い,直接訓練は嚥下訓練食品を用いて翌年3月から3ヵ月間行った。訓練前後の嚥下機能はVFの他,舌圧等で,呼吸機能はオートスパイロ®で評価した。
【結果と考察】
訓練後に舌圧値や最大呼気圧の増加を認めた。VFにて咽頭残留を認めたが喀出は可能となり,誤嚥性肺炎も生じなかった。直接訓練終了後,病棟職員の監視下でトロミ茶50ccの摂取が毎日可能になり,訓練前の患者の希望を叶えることができた。また,構音訓練時のカラオケへの意欲に着目し,訓練後も継続できるよう環境を整えたことで,QOL向上に繋げることもできた。退院については訓練の効果に限界がみられるため,常食摂取と退院の課題を隔てた上で,再検討する必要がある。
重度嚥下障害を有しながらも常食摂取に固執する前頭側頭型認知症患者に対し摂食嚥下訓練(以下,訓練)の効果と限界を示し,療養生活上の患者のQOL向上に繋がる可能性について検討した1症例を報告する。
【症例と経過】
71歳男性。主訴は「食べられるようになって家に帰りたい」であり,既往歴は電撃症,心房内血栓症,うつ病,誤嚥性肺炎であった。重度嚥下障害のため胃瘻を造設の後2014年4月に当院へ入院した。患者は常食摂取と退院に対する要求が強く,家族からの希望もあり嚥下評価を実施した。5月(初回)のVFにて咽頭期障害が顕著であり,経口摂取は楽しみ程度と判断したが,患者は「常食でないのなら」と食べること自体を拒んだ。さらに患者は「嚥下機能は改善した」と主張し再検査を熱望したため7月,11月に再検査を行った。その後患者が「楽しみ程度でも良いから食べたい」と気持ちを変えたため,同年12月から半年間,歯科衛生士と言語聴覚士が間接訓練を行い,直接訓練は嚥下訓練食品を用いて翌年3月から3ヵ月間行った。訓練前後の嚥下機能はVFの他,舌圧等で,呼吸機能はオートスパイロ®で評価した。
【結果と考察】
訓練後に舌圧値や最大呼気圧の増加を認めた。VFにて咽頭残留を認めたが喀出は可能となり,誤嚥性肺炎も生じなかった。直接訓練終了後,病棟職員の監視下でトロミ茶50ccの摂取が毎日可能になり,訓練前の患者の希望を叶えることができた。また,構音訓練時のカラオケへの意欲に着目し,訓練後も継続できるよう環境を整えたことで,QOL向上に繋げることもできた。退院については訓練の効果に限界がみられるため,常食摂取と退院の課題を隔てた上で,再検討する必要がある。