The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

スポンサードセッション

オンデマンド動画

スポンサードセッション7

共催:株式会社松風

[SO2] 「S-PRGフィラーがCandida albicansに及ぼす抗菌効果と臨床応用の可能性について」

○田村 宗明1 (1. 日本大学歯学部細菌学講座)

【略歴】
1986年:
日本大学歯学部  卒業
1990年:
日本大学大学院歯学研究科博士課程 修了
1991年:
日本大学歯学部  細菌学講座助手
1995年:
日本大学海外派遣研究員(UBC)
2007年:
日本大学歯学部  細菌学助教
2015年:
日本大学歯学部  細菌学准教授

口腔には700種もの菌が棲み付いており,口腔ケアが日常的に実施されているとこれらの菌は互いにバランスを保ちながら我々には害を及ぼさない口腔常在菌叢を形成しています。しかしながら,口腔ケアが欠如した場合には,バランスが崩れて菌数の増加や菌叢の遷移が生じます。その結果,齲蝕や歯周病などの口腔内疾患のみならず,これらの疾患との関連性が報告されている肺炎,糖尿病や感染性心内膜炎などの全身疾患の発症に繋がります。特に,免疫機能や体力の低下などが見られる高齢者では自らの口腔ケア実施が不十分となる可能性から口腔常在菌数や叢が変化しやすく,口腔内外の疾患発症率は高くなります。したがって,高齢者の健康維持のために口腔常在菌叢をコントロールすることは非常に重要です。現在,歯磨きなどの物理的な口腔清掃の補助を目的としてさまざまな消毒剤や抗菌剤が添加されている口腔ケア剤が用いられていますが,長期使用による菌交代症や耐性菌の出現が問題とされています。これらの背景から,消毒剤や抗菌剤などと一線を画する副作用のない新しい口腔ケア用材料の開発が急務となっています。

 Candida albicansは口腔内で優勢な真菌であり,日和見感染症を惹き起こすのみならず,口腔カンジダ症やカンジダ肺炎および腸炎などの全身疾患発症に関わることが報告されています。高齢者では免疫機能低下の他,この真菌が付着しやすい義歯の装着率が高いことから,C. albicansの口腔内からの検出率は高いです。したがって,高齢者の口腔環境維持のために新たな抗真菌作用を有する歯科材料の開発も必須となっています。

 S-PRGフィラーは6種類のイオンを徐放することにより,細菌の付着およびプラーク形成抑制作用,酸中和作用および歯質強化による耐酸性の向上などのバイオアクティブ効果を発現し,リチャージが可能な新素材です。効果を発揮する徐放されたイオンは消毒剤や抗菌薬と異なり,耐性菌の出現リスクが少ないうえに長期使用が可能であり,高齢者の口腔内外疾患の発症抑制に有効と考えられます。

 本セミナーでは,S-PRGフィラーが持つC. albicansの発育や病原因子の抑制効果や他の口腔微生物に及ぼす影響について紹介するとともに,PMTCを目的に開発されたS-PRGフィラー含有ジェルの臨床・生活応用を提案し,高齢者の口腔内疾患発症予防の可能についてお話します。
 本演題発表について開示すべきCOI関係にある企業等はありません。