The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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共催:(株)ジーシー

[SO3] スマートな口腔機能低下症の管理:検査結果を用いた「お口年齢」の活用

○佐藤 裕二1 (1. 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座)

【略歴】
1982年:
広島大学歯学部卒業
1986年:
広島大学大学院(歯科補綴学1)修了・歯学博士
1986年:
歯学部附属病院助手
1988年~1989年:
アメリカ合衆国NIST客員研究員
1990年:
広島大学歯学部講師(歯科補綴学第一講座)
1994年:
広島大学歯学部助教授
2002年:
昭和大学歯学部教授(高齢者歯科学)

口腔機能低下症の検査・管理が保険導入されたが,年齢性別によらず,同じ基準で判定されている。したがって,中年では年齢に相応しい口腔機能がなくても,口腔機能低下症と診断されず,超高齢者では歳相応以上の口腔機能であっても,「口腔機能低下症」と診断されるという問題点がある。実際,90歳以上の方はほとんどが「口腔機能低下症」に該当してしまう。「あなたは,お口の機能7つのうち6つがが下がっています。あれもして,これもして,よほど頑張らないと危ないですよ。」などといった「だめだし」をされると,へこんでしまうであろう。では患者さんのモチベーションをあげるための指導はどうすれば良いのであろうか。

 90歳の方で,ドライバーで150ヤードしか飛ばなくなった方に「あなたは飛距離が落ちているので,筋トレ,ジョギング,練習場通い,コーチのレッスンをもっとしないとだめですよ。」といった指導が適切であろうか?  「90歳で150ヤード飛ぶのは素晴らしいです。ただ,ドライバーをシニア用に変えるともっといいかもしれませんね」といった指導の方がよくないであろうか?

 老化により口腔機能が低下し,性差があることを考慮して,口腔機能が歳相応かどうかを示すことができれば,各年代における管理の目標が明確になると考えた。「骨年齢」「血管年齢」「肺年齢」「肌年齢」「脳年齢」などと同様に「口腔機能年齢(お口年齢)」を確立することが必要である。

 多くの人の年齢ごとの口腔機能低下状況を調査することで,各年代の平均値と分布を明らかにし,各人の検査結果が同世代の分布のどこにあるかを示すことにより,口腔機能年齢の算出方法を作った。これにより,各人における管理の目標を明確にすることが可能となった(この理論的背景に関しては明日の学術シンポジウムで紹介する)。

 その結果,「90歳のあなたは,お口の年齢は87歳ですから,すばらしいです。ただし,舌の力は95歳相当ですから,ちょっと鍛えた方が良いですね。ぜひお口をさらに若返らせましょう。」このように,「口腔機能年齢」は「ほめる指導」につながる。この「口腔機能年齢」を簡単に計算・印刷できるエクセルシートは当講座のHPで公開予定である。

 なお,各歯科医院において改変できて使いやすい「記録・管理・患者説明用紙」の紹介も行う。スマートな管理の一助となるであろう。

COI開示:なし