The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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座長:水口 俊介(東京医科歯科大学大学院高齢者歯科学分野)

共催:ロート製薬株式会社

[SO9] 入れ歯の超音波洗浄について、知っていそうで知らないこと~訪問診療での活用法~

○竹内 周平1 (1. 医療法人社団竹印 竹内歯科医療院 院長)

【略歴】
2004年:
東北大学歯学部卒業
2004年:
東京医科歯科大学大学院高齢者歯科学分野入局
2008年:
東京医科歯科大学大学院高齢者歯科学分野修了 歯学博士
2008年:
東京医科歯科大学歯学部附属病院スペシャルケア外来Ⅰ 助教
2015年:
竹内歯科クリニック勤務
2017年:
竹内歯科医療院 院長
2018年:
医療法人社団竹印 竹内歯科医療院 院長

我が国では1989年から厚生省と日本歯科医師会が主導し、「80歳になっても20本以上の自分の歯を保とう」と8020運動が始まった。年々達成率は増加し、平成28年歯科疾患実態調査では51.2%に達した。一方で、同調査における一人平均現在歯数は後期高齢者で急激に減少している。これは、多くの高齢者が生理的・病的な心身の衰えによって、口腔衛生状態を悪化させ、歯の喪失増加に至っていることを示唆しており、それは要介護高齢者が対象である訪問診療での入れ歯の需要が高まっているとも言える。従って、適切な高齢者歯科医療を提供するためには、入れ歯に関する正しい知識と十分な技術が求められる。

 入れ歯を使用している高齢者にとって、入れ歯は審美・咀嚼・構音機能などの口腔機能を回復させるものであり、日常生活に欠かせないものである。では、その入れ歯は適切に手入れがされているのだろうか。訪問診療では不衛生な入れ歯に遭遇する機会が多く、安全に美味しいお食事ができているのか疑問に思ってしまうことがある。デンチャープラークは咽頭プラークとの関連があると言われ、汚れた入れ歯が口腔内細菌のリザーバーとなって誤嚥性肺炎を引き起こす可能性は否定できない。

 入れ歯の清掃法には、機械的清掃法と化学的清掃法がある。デンチャープラークには粘膜上のプラークとは異なり、免疫機能や唾液による抗菌・洗浄作用が働きにくいことから、入れ歯表面から剥離しにくく、かつ化学的洗浄剤に抵抗性を有す。従って十分な機械的清掃を行うことが必須となる。機械的清掃にはブラシや超音波洗浄器があるが、高齢者にとって入れ歯の細部までブラシを到達させることは難しく、超音波洗浄器が有用となる。入れ歯の超音波洗浄は超音波で生じる物理化学的作用によって洗浄効果を発揮する。具体的には①キャビテーション現象による衝撃波、②キャビテーション現象で生じるラジカルによる化学的有機質分解、③超音波振動による引き剥がしによって、食渣・安定剤・デンチャープラークの引き剥がしから微生物の殺菌まで行うことができる。
 本講演においては、カンジダ菌を含むデンチャープラークの概要や超音波洗浄の物理化学的殺菌洗浄作用を引きおこす原理についてわかりやすく解説する。加えて、ロート製薬社製義歯用超音波洗浄器「洗力」を用いて、訪問診療の場を想定した超音波間接洗浄法に関する実験をいくつか行ったので、その有用性について議論したい。