The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

課題口演

ライブ

歯科訪問診療

Sat. Nov 7, 2020 9:20 AM - 11:00 AM A会場

[課題1-3] 在宅医療クリニック内での訪問歯科診療の実績

○若杉 葉子1,2、須佐 千明1,2、鴨田 勇司1、平井 杏里1,2、古屋 純一3、戸原 玄2 (1. 医療法人社団悠翔会 悠翔会在宅クリニック歯科診療部、2. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野、3. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 地域・福祉口腔機能管理学分野 )

【目的】訪問歯科診療の必要性は広まりつつあり、医科歯科連携や多職種連携の重要性も認識されている。しかしながら、訪問歯科介入による効果は検証されていない。そこで今回、在宅患者に歯科が関わることで何ができるのかを検討した。

【方法】2017年4月からの2年間で訪問歯科依頼のあった患者171名を前向きに検討した。

【結果と考察】患者の内訳は男性68名、女性103名、平均年齢84.7±8.5歳、主訴は口腔衛生管理26%、歯科治療15%、義歯関連30%、摂食嚥下障害35%であった。嚥下障害重症度分類(DSS)で評価すると63%がDSS5以下であり、主訴に関わらず半数以上が何らかの嚥下障害を抱えていた。患者の食形態を比較すると、常食を食べている患者(常食群)が53%、常食以外を食べている患者(非常食群)が35%、経管栄養・静脈栄養の患者(非経口群)が12%であった。常食群と非常食群を比較すると、主疾患と性別、年齢の分布は変わりなかったが、非常食群の方が栄養状態とPerformance Status(PS)が低い傾向にあった。2年間の前向き調査の中で、7割の人が常食を食べ続けることができていた。初診時と2年後で簡易栄養評価(MNA-SF)の分布に変化がなく、先にPSが低下する傾向があった。非常食群では2割の人が食形態を上げることができた。常食を食べていない原因は口腔内に原因がある場合と退院後であることが多く、これらが歯科介入により改善していた。MNA—SFは、歯科初診時と比べて2割で改善がみられた。非経口群のうち経口摂取を再開したのは70%であった。全体の25%が死亡し、74%が在宅看取りであり、そのうち85%は最期まで経口摂取を継続していた。

以上より、訪問歯科が介入することにより食形態と栄養状態が改善する場合があり、改善の可能性を見逃さないことが必要と考えられた。また、嚥下障害の早期発見や多職種との共有は重要であり、入院予防へつながると考えられた。さらには、嚥下リハビリテーションの介入により最期まで口から食べられる在宅療養患者を増やすことに貢献できると考えられた。

COI開示:なし

倫理委員会承認番号:医療法人社団悠翔会倫理委員会0003