The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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課題口演

ライブ

口腔機能低下症

Sat. Nov 7, 2020 11:10 AM - 12:50 PM A会場

[課題2-1] ルシフェラーゼアッセイによる口腔不潔の定量評価

○藤本 けい子1、後藤 崇晴1、岸本 卓大1、岩脇 有軌1、水頭 英樹1、永尾 寛1、市川 哲雄1 (1. 徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔顎顔面補綴学分野)

【目的】
 近年,口腔と全身状態との関連が注目されており,特に高齢者の死因第7位である誤嚥性肺炎による死亡率と口腔不潔との関連が指摘されている。口腔不潔は口腔機能低下症の検査項目の一つであり,その検査法の一つに舌苔付着度(Tongue Coating Index,TCI)測定がある。舌背細菌数のより客観的な測定方法と期待された細菌数測定装置は,現在まで医療機器として認可されていない。
 当教室ではこれまで簡便にかつ客観的に口腔不潔の評価を行う方法として,綿棒で口腔の測定部位を拭い取り,生物由来のATPとAMP量をルシフェラーゼアッセイによって定量する方法について提案し,その有効性についての研究を行ってきた。
 本研究では,このルシフェラーゼアッセイによる口腔不潔の評価方法の有効性について口腔機能低下症の検査の観点から検討することを目的とした。
【方法】
 徳島大学病院歯科(そしゃく科)にてメンテナンスを行っている高齢患者85名(男性27名,女性58名,年齢77.1±6.4歳,平均歯数11.7本)に対し口腔不潔の検査を行った。口腔不潔の検査は,TCI,細菌数測定装置(細菌カウンタ,パナソニックヘルスケア,東京)による細菌数測定,およびルシフェラーゼアッセイ(ルミテスターPD-20,キッコーマンバイオケミファ,東京)によるATP,AMP量に比例するRelative Light Unit(ルシフェラーゼアッセイ値)を測定した。測定検体は来院時すぐに10 mlの水で5秒間うがいを行った吐出液を100 μl採取し綿棒に滴下したもの(うがい溶液)と,綿棒で舌背部を拭ったものの2種類とした。また,口腔内の汚れについても5段階で評価した。
【結果と考察】
 舌背部の検体においては,細菌数とルシフェラーゼアッセイ値は,TCIとの間にそれぞれ有意な相関関係が認められた。また,舌背部の検体においては,細菌数とルシフェラーゼアッセイ値との間に有意な相関関係が認められたものの,うがい溶液においては有意な相関関係は認められなかった。さらにうがい溶液と舌背部のルシフェラーゼアッセイ値は,共に口腔内の汚れとの間に有意な相関関係が認められた。
 以上より,ルシフェラーゼアッセイによる測定は,食物残渣などを含む総合的な口腔不潔を客観的に評価できる可能性が示唆された。
(徳島大学病院医学系研究倫理審査委員会承認番号:2338)