[課題2-2] 口腔機能低下症の検査項目数の選択による診断の簡易化についての検討
【目的】
平成30年度の歯科診療報酬改定で「口腔機能低下症」が保険収載され、注目度が高まっているが、現時点での算定件数は低い。その理由の一つとして、検査項目が多いことが挙げられる。そこで本研究では、診断の妥当性を保ちつつ検査項目を合理的に減らし、診断を簡易化する可能性について検討を行った。
【方法】
本研究の対象者は、2019年にSONIC研究に参加した78-80歳の自立した地域在住高齢者537名とした。口腔機能低下症の検査項目である、口腔乾燥(口腔水分計)、口腔衛生状態(Tongue Coating Index)、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能(スコア法)、嚥下機能(EAT-10)をそれぞれ検査した。なお、口腔機能低下症の診断は、日本老年歯科医学会の診断基準に基づいて行った。最初に、因子分析による検査項目のグループ化、判別分析による各検査項目の口腔機能低下症診断への寄与度の検討を行った。 次に、因子分析で得られた4つのグループで寄与度の最も高い検査項目のみを抽出した。抽出した検査項目で、口腔機能低下症を診断するために、現状の口腔機能低下症に対して感度・特異度が最も高くなるように、簡易的な口腔機能低下症診断の該当項目数の基準を決定した。
【結果と考察】
口腔機能低下症と診断された者は、292名の54.4%であった。因子分析の結果、第一グループ(パ音、タ音、カ音)、第二グループ(咬合力、咀嚼機能)、第三グループ(口腔衛生状態、舌圧)、第四グループ(口腔乾燥、嚥下機能)に分類された。判別分析の結果、口腔機能低下症への寄与度は、咀嚼機能、舌圧、口腔乾燥、口腔衛生状態、パ音、咬合力、カ音、タ音、嚥下機能の順となった。4つのグループから寄与度の強いパ音、咀嚼機能、舌圧、口腔乾燥を選び、口腔機能低下症の診断を行った場合、低下の該当数が2項目以上を口腔機能低下症とすると、感度82.2%、特異度79.2%、陽性的中率82.5%、陰性的中率78.9%であった。また、簡易化した口腔機能低下症の診断を行った場合、口腔機能低下症と診断された者は、291名の54.2%であった。本研究の結果より、口腔機能低下症の検査項目の選択による診断の簡易化の可能性が示された。
(COI開示:なし)
(大阪大学大学院歯学研究科・歯学部及び歯学部附属病院倫理審査委員会承認番号H27-E4)
平成30年度の歯科診療報酬改定で「口腔機能低下症」が保険収載され、注目度が高まっているが、現時点での算定件数は低い。その理由の一つとして、検査項目が多いことが挙げられる。そこで本研究では、診断の妥当性を保ちつつ検査項目を合理的に減らし、診断を簡易化する可能性について検討を行った。
【方法】
本研究の対象者は、2019年にSONIC研究に参加した78-80歳の自立した地域在住高齢者537名とした。口腔機能低下症の検査項目である、口腔乾燥(口腔水分計)、口腔衛生状態(Tongue Coating Index)、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能(スコア法)、嚥下機能(EAT-10)をそれぞれ検査した。なお、口腔機能低下症の診断は、日本老年歯科医学会の診断基準に基づいて行った。最初に、因子分析による検査項目のグループ化、判別分析による各検査項目の口腔機能低下症診断への寄与度の検討を行った。 次に、因子分析で得られた4つのグループで寄与度の最も高い検査項目のみを抽出した。抽出した検査項目で、口腔機能低下症を診断するために、現状の口腔機能低下症に対して感度・特異度が最も高くなるように、簡易的な口腔機能低下症診断の該当項目数の基準を決定した。
【結果と考察】
口腔機能低下症と診断された者は、292名の54.4%であった。因子分析の結果、第一グループ(パ音、タ音、カ音)、第二グループ(咬合力、咀嚼機能)、第三グループ(口腔衛生状態、舌圧)、第四グループ(口腔乾燥、嚥下機能)に分類された。判別分析の結果、口腔機能低下症への寄与度は、咀嚼機能、舌圧、口腔乾燥、口腔衛生状態、パ音、咬合力、カ音、タ音、嚥下機能の順となった。4つのグループから寄与度の強いパ音、咀嚼機能、舌圧、口腔乾燥を選び、口腔機能低下症の診断を行った場合、低下の該当数が2項目以上を口腔機能低下症とすると、感度82.2%、特異度79.2%、陽性的中率82.5%、陰性的中率78.9%であった。また、簡易化した口腔機能低下症の診断を行った場合、口腔機能低下症と診断された者は、291名の54.2%であった。本研究の結果より、口腔機能低下症の検査項目の選択による診断の簡易化の可能性が示された。
(COI開示:なし)
(大阪大学大学院歯学研究科・歯学部及び歯学部附属病院倫理審査委員会承認番号H27-E4)