The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

認定医審査ポスター

ライブ

認定医審査ポスターG2

Sat. Nov 7, 2020 3:20 PM - 5:20 PM B会場

[認定P-09] 多職種連携により一部経口摂取が可能となった一例

○五十嵐 公美1,2 (1. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科、2. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【緒言】
 在宅では、生活環境によって経口摂取環境は強く影響を受ける。今回、脳出血発症後、約2年間にわたって経口摂取がなかった患者に対して、摂食嚥下評価および多職種によるサポートを行ったことで、一部経口摂取が可能となった一例を経験したので報告する。

【症例の概要と処置】
 70歳代の男性、少しでも食べさせたいという妻の強い希望により、老人保健施設から依頼を受けた。現病歴は、初診-2年に脳出血、翌年胃瘻造設している。屋内のADLは概ね自立、MMSEは23点であった。摂食状況は、食物を用いない嚥下訓練を行っていた。口腔内所見は、全顎的な歯石沈着と歯肉発赤を認め、義歯は上下不適合であった。
 患者は初診の翌日に在宅復帰予定であり、老健のスタッフおよび退所後に関わるスタッフが初診時に集まり、摂食嚥下リハビリテーションを含めた支援体制のカンファレンスを行った。摂食嚥下機能の精密検査の結果は藤島のGr.4と判断した。
 問題点として、高次脳機能障害により自食は誤嚥リスクが高いが、妻は経口摂取を進めたいという焦りがある半面、自ら介助することに対しては消極的であることが挙げられた。従って、まずは入所していた老健のデイケアでSTによる直接訓練を開始し、同時に在宅での経口摂取開始を見据えて、介護保険の短期集中リハビリテーションを利用した多職種による在宅環境整備を行った。

【結果と考察】
 デイケアでの経口摂取は週3回の頻度で嚥下調整食コード0から開始、初診+5か月後にはコード3となった。在宅訪問時には、ケアマネ、ST、PTが同席し、摂取状況や問題点を共有した。妻にも介助時の留意事項を徐々に説明し、多職種で不安感の解消に努め、短期集中リハビリテーションの終了とともに減少した経口摂取頻度を在宅で維持した。
 本症例では、患者は2年間、経口摂取がなく過ごした。ステージは生活期に相当し、摂食嚥下機能の向上はわずかであった。在宅において評価およびカンファレンスを定期的に行い、摂食状況や問題点を共有し、経口摂取環境が整備されたことが今回の摂食嚥下機能の改善要因である。経口摂取は、夫婦の会話のきっかけや、本人の楽しみにつながっており、生活の質の向上に寄与したと考えられる。現状の機能を可及的に維持し、患者と家族の経口摂取の楽しみを多職種で継続的に支援していく。
 なお、本報告の発表について患者本人と妻から文書による同意を得ている。