The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

ライブ

摂食審査ポスターG2

Sat. Nov 7, 2020 8:40 AM - 10:30 AM C会場

[摂食P-09] ワレンベルグ症候群患者への継続的リハビリテーションにより経口摂取可能になった症例

○田頭 いとゑ1 (1. 東京医科歯科大学歯学部付属病院)

【目的】
 延髄外側症候群では重度の嚥下機能障害を生じることがあり,急性期からの早期の摂食嚥下リハビリテーションの介入が望まれる。今回,発症早期から言語聴覚士とともに摂食嚥下リハビリテーション介入し,経口摂取可能になった1 例を経験したので報告する。
【症例及び処置】
 57歳男性。右延髄外側梗塞にて緊急搬送された。直後から右側顔面神経麻痺と構音障害,重度の嚥下困難の訴えがあった。発症後10日目の当科初診時の内視鏡下嚥下機能検査では,咽頭に多量の泡沫状唾液を認め,嚥下反射惹起を認めなかったため言語聴覚士とともに間接訓練を開始し,胃瘻造設となった後に回復期へ転棟となった。介入20日後に咽頭の唾液貯留量が著明に減少し嚥下機能の改善が示唆されたが,様々な代償法下でも液体の食道入口部の通過はなかった。バルーンの引き抜き訓練を開始し,10mlまで到達したところで再評価を行ったところ,左側臥位頸部右回旋であればわずかな液体の通過を認めたため,液体少量での直接訓練を開始した。その後,バイオフィードバックでの嚥下の習得も行い,ペースト食も少量であれば通過するようになった。介入後93日目には正中位でも誤嚥なく摂取可能になったためペースト食を開始した。介入後142日後,刻み食で半量以上の栄養量を摂取できるが,摂食時の疲労感のため胃瘻も併用した状態で退院となった。退院後も当科と言語聴覚士との継続的なフォローを行っているところであり,摂食時の疲労感が減少しつつあり,胃瘻の使用は朝食時のみとなっている。
【結果と考察】
 延髄外側症候群による嚥下障害はしばしば難治例となることが知られている。本症例では,本人の理解力やコンプライアンスが良好で,バルーン訓練を早期から開始できたこと,主治医から積極的な直接訓練への理解が得られたこと,言語聴覚士による連携を得られたためリハビリが奏功して経口摂取可能なレベルまで到達したと考えられた。患者の希望は,復帰したばかりの仕事が落ち着いてから経口摂取方法について考えたいとのことであり,今後は全量の経口摂取を目指すか検討していく予定である。