The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

ライブ

摂食審査ポスターG2

Sat. Nov 7, 2020 8:40 AM - 10:30 AM C会場

[摂食P-13] 慢性期の摂食嚥下障害に対して多面的アプローチが有効であった一例

○内宮 洋一郎1 (1. おおい歯科医院)

【目的】

脳血管障害後遺症による舌機能低下や鼻咽腔閉鎖不全のある摂食嚥下障害患者で,慢性期まで特別な対応をされてこなかった症例に遭遇した。KT(口から食べる)バランスチャート(KTBC)を使用して施設スタッフと問題を共有し連携をはかり,多面的なアプローチを行うことで,患者の主訴を解決できた一例を経験したので報告する。

【症例の概要と処置】

71歳,男性,老人施設入所者。脳梗塞,脳出血,胆のう炎,誤嚥性肺炎の既往あり。

令和元年6月に誤嚥性肺炎にて入院。退院後8月「とろみをなくしてほしい,ペースト食は食べたくない」という主訴により当院訪問歯科診療を受診。

施設スタッフとKTBCによる評価を行い,問題点の抽出と歯科と介護の情報共有を行なった。

訪問初診時,意識清明で,ADLは車いす自立移動,神経学的所見は右側口唇閉鎖やや不良,右側舌下神経麻痺,右側舌萎縮あり,軟口蓋挙上不良,Gag Reflex(-),湿性嗄声あり,流涎あり,会話明瞭度は,時々わかる言葉がある,であった。口腔衛生状態は不良で歯石沈着を認め,解剖学的所見は高口蓋であり,舌が口蓋に接触不十分であり平均舌圧は2.6kPaであった。退院後の食形態は,ペースト食,とろみは濃いとろみであった。施設スタッフ立会のもと,VEによる嚥下機能評価を行なったところ,少量の不顕性誤嚥,喉頭蓋谷に咽頭残留を認めた。

介入は以下のアプローチを行った。

1訪問歯科衛生指導による口腔衛生管理と歯石除去

2PAP・PLPが一体となった補助床の作製

3補助床を装着して間接訓練(舌挙上訓練とメンデルソン手技)

4食事時,交互嚥下,嚥下後の咳払いの促しを施設スタッフに指導

【結果と考察】

PAP・PLP一体装置の装着による平均舌圧は9.6kPaで,再評価時のVEによる嚥下機能評価では,薄いとろみ付与で誤嚥なしであった。そこで食形態は,ミキサー食から一口大に変更した。初診から半年間,誤嚥性肺炎にならずに経過している。急性期や回復期に対応されずに慢性期をむかえる患者は他にもいると予想され,開業医レベルでも対応できるようにしていきたい。