The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

ライブ

認定医審査ポスターG3

Sat. Nov 7, 2020 12:10 PM - 2:10 PM C会場

[認定P-18] 口腔機能低下を呈する要介護高齢者に対して補綴治療を行った一症例

○廣田 秀逸1 (1. 大阪歯科大学高齢者歯科学講座)

【目的】

郊外の在宅要介護高齢者は歯科医院に通院困難な場合があり不適合義歯の長期間使用もしくは義歯の不使用により口腔機能の低下を進行させることがある。

本症例は、上顎義歯未装着により咬合低下を呈した要介護高齢者に対し補綴治療を行い、良好な結果を得たので報告する。

【症例および処置】

86歳、女性。咀嚼困難・審美不良を主訴に担当介護専門員から訪問歯科診療の依頼を受けた。

既往歴はくも膜下出血、左大腿骨転子部骨折で、現在は糖尿病のため投薬治療を受けている。要介護度は4で、座位での診療は可能であり、認知機能に問題はない。残存歯は中等度歯周炎で、上顎は残存歯7本のうち4本は残根で、1本は齲蝕が進行していた。上顎欠損部は放置されていたため咬合が低下していた。下顎は右側犬歯のみ残存しており、下顎義歯は床粘膜面が不適合であったが食事時のみ使用していた。義歯未装着時はすれ違い咬合を呈していた。口腔機能低下を疑い検査をした結果、口腔衛生不良、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、舌圧低下が認められた。診査の結果、上顎義歯未装着による咬合低下を伴う咀嚼障害、審美障害、ならびに口腔清掃不良、咬合力低下、低舌圧、舌口唇機能低下による口腔機能低下症と診断した。治療計画として、保存可能歯に対しう蝕処置と根面板処置後、残根上義歯を作製し咀嚼機能の回復を図った。その後、残根歯の抜歯、義歯の調整、口腔清掃指導を行い口腔清掃不良の改善を図った。並行して舌口唇運動機能低下、舌圧低下に対し筋機能訓練指導を行い口腔機能低下症の改善を図った。

【結果と考察】

う蝕処置後、義歯作製を行い咀嚼障害と審美障害が改善された。歯冠-歯根比が小さく歯冠修復が困難な歯牙をオーバーデンチャーの支持に利用する事で義歯の安定を得る事ができたと考える。義歯装着後、食事形態は軟飯食から常食へ改善した。根面板形態、抜歯、清掃指導により清掃性の改善を得たと考える。間接訓練の指導により未だ低値であるが舌圧、舌口唇機能に改善傾向を認めた。

今後、担当介護専門員との情報共有を継続し口腔機能を維持するために、義歯使用状況の確認と残存歯の管理、機能訓練指導を継続する予定である。