The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

ライブ

認定医審査ポスターG4

Sat. Nov 7, 2020 3:10 PM - 5:10 PM C会場

[認定P-21] 全身疾患を伴う重度歯周炎による咀嚼障害に対して補綴治療を行った症例

○石井 悠佳里1 (1. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座)

【緒言】

近年、歯周病を代表とした歯科疾患と全身疾患との関連が明らかになり、全身的管理に対する歯科の重要性は年々高くなっている。
今回、歯科受診により明らかになった糖尿病と高血圧症に対して、医科と連携し、口腔と全身状態の改善を行った一例を経験したので報告する。

【症例】

 68歳の男性。咀嚼困難を主訴として来院した。数年前より歯が自然脱落し始めたが、約30年前に埋入した右側下顎臼歯部のインプラントで咀嚼可能だったため、歯科は未受診だったという。しかし、6か月前に46、47番部のインプラント上部構造が脱離し、咀嚼が困難となり来院した。口腔内は16、22、24~27、31、32、35~37、42~47番歯が欠如していた。歯肉腫脹が著明で、17、23、41番歯は動揺度3度、43、44部のインプラントは動揺度2度であった。これまで全身的既往歴はないとのことだったが、抜歯やインプラント除去などの観血処置が必要となる可能性が高く、血液検査を実施した。HbA1c 11.6%、血中グルコース濃度332ml/dl、血圧150/98mmHgと高値であったため、診断および治療を内科へ依頼した。なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得た。

【経過】

 内科での血糖・血圧コントロールと並行し、口腔衛生管理を行った。また、暫間義歯にて咀嚼機能の改善を図り、内科と歯科の両方で、食事療法と栄養指導(減塩食、食事方法と必要栄養量について)を行った。血糖値と血圧の改善後、すべてのインプラントの除去と動揺歯の抜歯を含めた歯周基本治療を行った。歯周状態の改善後、審美性の改善と歯軸改善を目的とした上顎残存歯の歯冠補綴装置と上顎可撤性局部義歯、33、34番歯に磁性アタッチメントを用いた下顎総義歯を製作し、最終補綴装置とした。補綴装置装着後、咀嚼機能は改善し、栄養指導に沿った食事を摂取可能となった。現在、正常高値血圧を維持しており、血糖値にも改善が認められた。

【考察】
 一般的に歯周病の重症化から医科を受診することは少なく、また、重度歯周病の基に全身疾患が潜んでいる可能性も口腔内所見のみでは否定できない。本症例のように、全身疾患の初期症状が口腔内に出現している可能性を念頭におき、口腔衛生管理を行うとともに、必要に応じて全身検査を行い、医科受診を勧めるなどの積極的な医科歯科連携を図る必要があると考えられた。