The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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学術用語ミニシンポジウム

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多職種連携におけるコミュニケーション・ツールとしての用語の重要性

座長:眞木 吉信(東京歯科大学名誉教授)

[MSY-1] 多職種連携における歯科用語

○大神 浩一郎1 (1. 東京歯科大学 千葉歯科医療センター)

【略歴】
1999年:
東京歯科大学卒業
2003年:
東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科補綴(Ⅰ)学専攻)修了
2003年:
東京歯科大学歯科補綴学第一講座 助手
2012年:
東京歯科大学有床義歯補綴学講座 講師
2015年:
東京歯科大学老年歯科補綴学講座に講座名変更
2019年:
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所東京デンタルクリニック院長
2020年:
東京歯科大学千葉歯科医療センター 講師

現在に至る

摂食・嚥下障害のリスクは、日常生活動作の低下に随伴して増大するため、施設入所者や在宅患者に対する正しい栄養管理を行うのは重要である。そのための食支援において、歯科が医科、福祉との連携を進め「食事と栄養」を共通認識としたミールラウンドでは重要な役割を果たしている。また、口腔機能低下は認知症や全身的な疾患、あるいは運動機能、生活機能とも密接に関連していることのエビデンスが示され、口腔の健康保持の重要性は、医科においても共通の認識となっている。

近年、歯科の役割が重要視され、多職種と連携する場面がここ数年急増している。医師、看護師、管理栄養士との協働や、高齢者施設、歯科訪問診療での介護福祉士などとの協働が必須であり、重要なのが各領域で使用している専門用語が理解し、コミュニケーションをとることである。しかし、用語をめぐる関係者間の解釈が問題となることがある。

一例を挙げると、「口腔ケア」は口腔清掃を主とした口腔環境の改善を表す用語として一般によく用いられてきたが、医療職のなかでは、これに摂食嚥下などの口腔機能の回復や維持・増進をめざした行為すべてを含むものとして使用することもあり、定義づけることは容易でなかった。一方で,「口腔ケア」の用語は日本口腔ケア協会譲渡制限株式会社が権利者として商標登録していることも事実で(商標登録番号4568672)、学術用語として位置づけることに疑問があった。

このような状況から日本老年歯科医学会は日本歯科医学会の学術用語委員会とも連携をとり、「口腔ケア」は口腔環境と口腔機能の維持・改善を目的としたすべての行為をさす一般用語と位置づけた。学術用語としては、口腔清掃を含む口腔環境の改善など口腔衛生にかかわる行為を「口腔衛生管理」、口腔の機能の回復および維持・増進にかかわる行為を「口腔機能管理」とし、この両者を含む行為は「口腔健康管理」と定義した。
本ミニシンポジウムでは、多職種との協働において歯科用語で齟齬が生じた例を紹介するとともに、歯科医療従事者に馴染みのない用語などについて私見を交えて紹介したい。