[MSY2-2] そうだ、皆でスーパーに行こう
【略歴】
2013年:
四国学院大学専門学校 歯科衛生科卒業
三豊総合病院企業団 歯科保健センター勤務
2015年:
まんのう町国民健康保険造田歯科診療所勤務
現在に至る
2019年:
徳島大学大学院総合科学教育部博士前期課程地域科学専攻地域創生分野修了
修士(学術)
日本老年歯科医学会認定歯科衛生士
2013年:
四国学院大学専門学校 歯科衛生科卒業
三豊総合病院企業団 歯科保健センター勤務
2015年:
まんのう町国民健康保険造田歯科診療所勤務
現在に至る
2019年:
徳島大学大学院総合科学教育部博士前期課程地域科学専攻地域創生分野修了
修士(学術)
日本老年歯科医学会認定歯科衛生士
「肉や魚を食べろと言われても、足がないけん手に入らんのじゃ!」
「独りぼっちで食事したって、なんちゃ美味しない」
歯科診療所で出会うフレイルの住民たち。その原因は彼らを取り巻く"劣悪な社会環境"にあった。我々がいくら意識を変えようと指導しても、本人の努力だけではどうにもならない。
私が歯科医師とともに現在の歯科診療所に赴任したのは約5年前で、当初は医療介護の連携体制すらまったく構築されていなかった。そこで歯科医師の呼びかけにより「琴南の在宅医療介護の連絡会」を発足。一風変わった地域の仲間たちとともに、在宅医療介護の体制を何とか整備してきた。
一方で、肝心の介護予防についてはなかなかうまくいかなかった。どんなに健康教育に力を入れても関心を持ってくれるのはリテラシーの高い一部の層だけで、健康を目的としたアプローチはそもそも本当に予防が必要な住民には届かない。やはり買い物困難や孤食といった、フレイルの根本的な要因である"社会性"へのアプローチが不可欠だと感じた。
そこで我々とともに立ち上がったのは、一人の宅配お弁当屋さんだった。彼女の発案で60~80代の高齢者たちによる有償ボランティア組織「ことなみ未来食工房」を発足。メンバーはこれまでの人生で培ってきた自らの“得意”を活かしながら、配食見守りや歯科送迎など様々な活動に取り組んでいる。
現在では買い物難民を救うべく、住民ボランティアや医療介護専門職、県内一のYouTuberや地元のシンガーソングライター、スーパーマーケットなどと協働しながら、地域高齢者を月に一度バスでスーパーに連れていく“買い物ツアー”を実現している。
山奥ポツンと一人暮らしで、買い物に行けず寂しさから食欲を失っていた80代のYさん。歯科診療所の発信により、薬局、訪問リハ、民生委員、医師などが皆でしつこく説得し、ようやく宅配弁当の利用と買い物ツアーへの参加につながった。人との関わりが増えたことでみるみる元気を取り戻し、劇的にフレイルが改善した。
住民の暮らしも健康も医療の力だけでは守れない。専門職じゃない人たちとつながり合うことによって、努力せずとも誰もが結果として健康になれる社会がつくられる。普段から健康な住民と接している歯科がそこを牽引しなければ、一体他に誰がやるのだろうか?
分野や業種の壁を超えた"地域のつながり"こそが、きっとこれからの時代をよりよい方向に変えていくのだと信じている。