The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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口腔機能

[O一般-007] 高齢入院患者における舌圧と栄養リスクおよび食形態との関係

○重本 心平1,2、堀 一浩2、宮島 久1、小野 高裕2 (1. 会津中央病院歯科口腔外科、2. 新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野)

【緒言】
口腔機能低下症の診断基準のひとつに舌圧低下があり,そのクライテリアは30KPaとなっている。これは,入院中もしくは施設入所中の高齢者を対象に,食事内容による分類,もしくはADL・認知レベルをもとに分類された報告を基準としたものである。一方で,口腔機能低下症の主要アウトカムは低栄養であるとされているが,舌圧と低栄養との関係を報告したものはあまり見られない。そこで本研究では総合病院入院中患者の舌圧と栄養状態もしくは食形態との関連を調べることを目的とした。
【方法】
対象は会津中央病院に入院中に歯科口腔外科に嚥下機能評価のために紹介され,経口摂取をしており舌圧検査(最大舌圧測定)を可能であった65歳以上の患者105名(男性60名,女性45名,平均年齢82.3±8.6歳)とした。最大舌圧はJMS舌圧測定器を用いて測定した。栄養リスク状態評価として,Geriatric Nutritional Risk Index を用い,82未満を栄養リスク高度群,82以上を栄養リスク中等度/軽度/なし群とした。また,食形態は嚥下機能評価および嚥下内視鏡検査の結果をもとに決定されており,ペースト食・ソフト食,刻み食・常食群の2群に分けた。食形態および栄養状態による2群間の舌圧の差をMann-whitney’s U検定を用いて検討し,ROC曲線を用いて低栄養および食形態におけるカットオフ値を検討した。
【結果と考察】
105名中56名が栄養リスク高度と評価され,その最大舌圧(11.7±8.6kPa)は栄養リスク中等度/軽度/なし群(17.9±11.7kPa)と比べて有意に低かった。また,ROC曲線により14.1kPaをカットオフ値とすると,高度栄養リスクに対する感度/特異度は59.2%/60.7%であった。一方,食形態では105名中61名が常食もしくは刻み食を摂取していた。ペースト食・ソフト食群(10.0±8.4kPa)は刻み食・常食(17.9±10.9kPa)と比較して有意に舌圧が低かった。ROC曲線により21.9kPaをカットオフ値とすると,ペースト食・ソフト食群に対する感度/特異度は44.7%/85.1%であった。今回,得られた結果は口腔機能低下症の診断基準におけるクライテリアを再考する上で有用であると考えられた。
(会津中央病院倫理審査委員会承認番号 1812) 
COI開示:なし