The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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口腔機能

[O一般-008] Down症候群の口腔機能検査によるオーラルフレイル研究―長崎スタディー

○小松 知子1、横山 滉介2、重藤 良太1、長田 侑子3、森本 佳成4、李 昌一5 (1. 神奈川歯科大学全身管理医歯学講座障害者歯科学、2. 神奈川歯科大学附属病院障害者歯科・高齢者歯科、3. 長崎大学病院歯科、4. 神奈川歯科大学全身管理医歯学講座、5. 神奈川歯科大学大学院横須賀・湘南地域災害医療歯科学研究センター)

【目的】
 Down症候群(DS)者は,歯周病の重症化からオーラルフレイル,口腔機能低下症へ容易に進行する可能性がある。平均寿命の延伸から,成人期以降に様々な問題を生じ,内分泌系疾患,アルツハイマー型認知症などを併発し,社会性に関連する能力の退行様症状などもみられる。このような現状において口腔機能の低下を予防することは,DS者の口腔機能低下の予防,健康長寿を実現するための重要な要素と考える。今回,我々はDS児・者の口腔機能状態と唾液抗酸化能との関連性を検討したので報告する。
【方法】
 研究の趣旨を説明し,保護者などにより文書による同意が得られたDS児・者を対象とした.口腔機能の評価項目としては,歯周ポケットの深さ(PD),舌苔の付着度(TCI),口腔乾燥度,舌口唇運動機能評価,最大舌圧などの測定を行った。唾液抗酸化能は安静時唾液を採取し,電子スピン共鳴法にて測定した。DS児・者はA群(20歳未満),B群(20歳以上40歳未満),C群(40歳以上)の3群に分けて評価した。
【結果と考察】
 対象者は83名(平均年齢21.2±12.3歳)であった。平均PDはA群:1.8±0.8,B群:2.2±0.8,C群:2.6±0.7, 平均 TCIはA群:16.3±15.9,B群:19.4±15.7,C群:19.4±13.9であった。平均の口腔乾燥度はA群:27.9±2.8,B群:27.2±2.2,C群:27.6±1.2,オーラルディアドコキネシスは「パタカ」の合計の平均としてA群:3.5±1.3,B群:2.7±1.7,C群:2.3±0.7,JMS舌圧測定器®による平均最大舌圧(kPa)はA群:10.3±8.1,B群:9.0±9.6,C群:7.0±7.1であった。抗酸化能(%)はA群:30.8±16.6,B群:37.5±17.6,C群:39.4±14.4であった。最大舌圧, オーラルディアドコキネシスは加齢とともに低下傾向にあり, 一方で抗酸化能の上昇が見られた。今回の研究結果をもとに,医科・歯科・栄養連携による抗酸化システムの活性化に関する研究によるエビデンスに基づきDS者,ひいては超高齢者社会における口腔機能の低下の予防に対するアプローチを行い,全身疾患の予防につながるトランスレーショナル研究を展開する予定である。
神奈川歯科大学倫理審査委員会承認番号第541号