一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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一般演題(口演・誌上開催)

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口腔機能

[O一般-012] 当院の外来高齢患者における口腔機能と身体機能の関連について

○白波瀬 龍一1,2、斎藤  徹1、牧野 秀樹1、砂川 裕亮1,2、松下 祐也1,2、渡邊 裕2、山崎  裕2、栂安 秀樹1 (1. 医療法人社団秀和会つがやす歯科医院、2. 北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)

【目的】高齢人口の増加に伴い近年,口腔機能低下症,フレイルが注目されている。口腔機能と身体機能の関連についてはすでにいくつかの先行研究で報告されているが,一般歯科医院に通院する高齢者を対象とした研究はみられない。本研究は,一般歯科医院の外来高齢患者における口腔機能と身体機能の関連を調査することを目的とした。

【対象と方法】2019年1月~12月までの期間に当院を定期受診した65歳以上の外来患者に,本研究に関する説明を行い参加の同意が得られ,口腔機能精密検査および握力,歩行速度を測定可能であった102名(平均年齢74.5歳±7.0、男性45名、女性57名)を対象とした。口腔機能精密検査は口腔機能低下症の診断のための評価に基づいて実施した。歩行速度は5メートルの通常歩行で,1秒間当たりの移動距離を計測した。握力はスメドレー式の握力計にて,利き手で測定した。分析は握力と歩行速度,口腔機能精密検査の各項目ごとの相関を分析し,握力と歩行速度をそれぞれ従属変数とし,年齢,性別,Body Mass Index,口腔機能精密検査の各項目を独立変数として重回帰分析を行った。

【結果】102名の対象者のうち口腔機能低下症と診断されたのは47名(46.1%)であった。Friedらのフレイル評価基準によると歩行速度は1m/秒未満,握力は男性26kg未満,女性18kg未満を基準値としているが,本研究の対象者でこの基準値を下回るのは歩行速度では40名(39.2%),握力では男性12名(26.7%),女性8名(14.0%)計20名(19.6%)であった。相関分析の結果,握力と相関していたのは舌圧のみで,歩行速度はオーラルディアドコキネシス「パ」「タ」および舌圧であった。重回帰分析の結果では,握力は舌圧(β: 0.292, p = 0.006)と,歩行速度はオーラルディアドコキネシス「パ」(β: 0.310, p = 0.018),舌圧(β: 0.224, p = 0.044)と有意な関連を認めた。

【考察】本研究にて舌圧と握力,歩行速度がともに有意な関連が認められたことから,四肢と顎口腔の筋力は関連していることが示唆された。また歩行速度は口唇運動機能とも関連が見られたことから下肢の運動機能は顎口腔の運動機能と関連していることが示唆された。
北海道大学大学院歯学研究院倫理審査委員会承認番号 2019第4号